十六
部屋に入る。口づけ。スカートの下を探る。
「あ、ありがとうございます。でもいまするのはちょっと……。疑われてしまいます。神無月さんは人気者なので」
「そう? わかった。マンション暮らしは慣れた?」
「三階建てのハイツで、マンションというほどのものでもないんですよ。廊下掃除の当番やゴミ箱掃除の当番があったりして、まるで町内会です」
「竹園は、宴会がないときも忙しいの?」
「はい、お部屋の掃除、廊下や設備品の掃除、レストランのお手伝い、売店のお手伝い、クリーニング屋さんの手配、きりがありません」
「ふつうのホテルの施設はあまりないよね」
「クリーニングとマッサージのサービスはあるんですけど、トレーニングジムのようなものはありませんね。六階建てと言っても、部屋数の少ない和風旅館ですから。そろそろいきます。じゃ、十時過ぎに」
もう一度口づけして出ていった。ブレザーをクローゼットのハンガーに掛け、ジャージを着る。ユニフォームをソファに延べる。運動靴を履く。カーテンを開けて外を見る。窓からの眺望はないが、駅前なので仕方がない。廊下に物音がしたのでドアを開けて覗くと、ダッフルやスポーツバッグを担いだ江藤たちだった。高木、太田、菱川、秀孝、小川、木俣。
「こんばんは」
「よう、早かな」
「みんないっしょにきたんですか」
「おう、岐阜羽島でモリミチば拾って、こだまできた」
高木が笑いながら手を挙げて、スッと一号室に入った。
「晩めしはどうすっと」
「会食はないようなので、適当に食います」
菱川が、
「俺たちも適当に食います。じゃ、あしたの朝めしのときにレストランで」
「はい。一階か三階にいきます」
太田が、
「また散歩でしょう」
「うん、六甲味噌を買うようにソテツに頼まれたんで」
木俣が、
「俺もその味噌買いにいくよ。フロントで待ってて」
フロントで六甲味噌について訊くと、
「芦屋駅の東のガードをくぐって、しばらくいくと国道2号線に出ます。上宮川町西の信号です。そこを左へ五百メートルほどいったところに、六甲味噌製造直売所がございます。ここからだと一キロくらいですね」
「どうもありがとうございました」
木俣が降りてきた。やはりジャージに運動靴だ。二人鍵を預けて大原市場に向かう。これらの商店の中にも六甲味噌を商っている店はあるのだろうが、とにかく製造所に向かう。
「奥さん孝行ですね」
「金太郎さんに言われて思いついただけだよ。金太郎さんみたいに気持ちが細やかなわけじゃない」
ケヤキ並木を歩いて、ガードをくぐる。2号線に出る。ポツポツ疣(いぼ)のようにビルが突き出ている寂れた道。
「散歩か……遠征先で散歩するなんて考えたこともなかったなあ。こうやって歩いてると、野球生活ってこんなにのんびりしてるものかと思うよ。いま七年目だけど、入団四、五年まではしゃかりきだった。野球をやってない時間は、先輩たちにくっついて歩いて飲み歩くか、ゴルフをやるものだと思ってた。ふだんがこういう時間なら、野球もグンと楽しくなる。ほんとうの意味でメリハリがつくからな。おお、あったあった、六甲味噌直販売」
小さな工場の並びに建っている店舗に入る。灰色の作業着を着た男が出てくる。アッと目を開いたが、
「いらっしゃいませ」
「赤味噌と白味噌をください。それとおかず味噌も」
「承知しました」
商品棚を掌で指し示す。木俣が棚に寄っていく。
「この、小樽に入った特赤味噌というのは?」
「大正七年の創業以来、頑なに守ってきた技で造りつづけてきた味噌です。手間をかけて育てた糀(こうじ)を用いて、蔵でゆっくりと熟成させた赤味噌です。どんな具材にも合う風味豊かな味噌です。こちらが同じバージョンの特白味噌です。関西では正月の雑煮などによく使われますが、甘みが強いので味噌料理にもお勧めです。味噌汁に使う場合は、赤味噌と合わせてお使いください。割合は、春と秋は半々、夏は赤を多め、冬は白を多めです。ご自分で試しながら適度な味を決めてもらえばいいと思います」
私は、
「賞味期限はどのくらいですか」
「四カ月までです。内容は五百グラムです」
「いただきます」
「俺も」
「おかず味噌も見せてください」
「こちらです」
ジャムの小瓶のような品物が並べてある棚に導く。
「天然の明石鯛を贅沢に用いた鯛味噌、神戸牛を使った牛肉味噌、朝倉山椒の香り豊かな山椒味噌、日本三大ネギ岩津ネギを使用した食欲そそる岩津ねぎみそ、この四種類です。すべて百五十グラムです」
「いただきます」
「俺も」
「郵送はしてもらえますか」
「いたします。お二人さま、こちらへ住所とお名前をお願いします」
書式に書きながら、
「かならずパンフレットを入れてください。注文したくなる商品があるかもしれませんから」
「承知いたしました。お二人とも三千円以上お買い上げいただきましたので、郵送料は無料にさせていただきます。次回もご愛顧のほどよろしくお願いします。……あすの試合がんばってください。芦屋市民はまず阪神か阪急のファンですが、野次り倒されてもお気になさらないように」
「慣れてます。野次を楽しみますよ」
二人店を出る。ケンタッキーや鮨屋やラーメン屋、国産車・外車のショールームなどのある道を戻っていく。明るい雲が層をなして浮かんでいる。木俣は空を見上げながら、
「ああ、いい散歩だ」
「木俣さんを中京からスカウトしたのはだれですか」
「本多さんだ。太田に声をかけたのも本多さん」
「いい仕事をしましたね。二人とも押しも押されもしない一軍のレギュラーです」
「まだまだだよ。今年はかなり研究されて、ちょっと不調なんだ」
「あれで不調なんですか?」
「ああ。曲がりの大きいスライダーを引っかけてサードゴロというのがけっこうある。太田もよく内角球を詰まらされてる。修ちゃんも大きいの狙いすぎてておかしくなってるな。ほかのメンバーはまあまあだ」
「みんな好調に見えますけど」
「好調さというのは、たまにホームランが打てるかどうかじゃなく、からだとバットスイングがマッチしてるかどうかで判断するんだ。相変わらず安定してるのは、いま言った三人以外のメンバーだ。モリミチは心配ない。あいつは投手の調子や癖をすぐ見抜いてしまうからね。リリースのときに口が開いてたら真っすぐ、セットポジションに入るときに深く息を吐いたらスライダーとかな。江藤さんは高目のストレートをよく豪快に空振りするけど、そこへ変化球がきたりすると、完全に体勢を崩されても突っこみながらはじき返して左中間へ持ってっちゃう。あの技は何年も安定してる。中さんの、からだを伸び縮みさせるチョウチン打法は健在だね。ボールの見極めが自在にできるからだよ」
「中さんの弾丸ライナーはすごいですね」
「すごい。それだけじゃない。詰まりながらでもレフト前へ運ぶ技も持ってるんだ」
「江夏をどう思いますか」
「あと数年は王様だろうな。金太郎さんは低目に強いので、やつの内角低目シュートの生命線で一打席目に打ち取れたとしても二打席目には通用しない。俺や長嶋みたいに高目が得意なバッターは抑えられても、金太郎さんに打たれる可能性はすごく高い。天敵だと思ってるだろう」
「王はよく小川さんを打ってますけど、なんででしょうね」
「王はきわどい球にはピクリともしない。置きにいった甘い球をかならず打つ。王を相手に失投したらぜったいいけないんだが、魅せられたように投げてしまう。健太郎さんにかぎらずね。しかし、散歩しながらでも野球の〈省察〉というのか、そういうことができるんだな」
「木俣さんがいてくれたんで、有意義な散歩になったんです。有意義ついでに、もう一つ教えてください。平松のシュートです。どうしてみんな振っちゃうんでしょうか。カミソリと言われてるくらいするどいんですから、見逃せばいいと思いますが。もちろんぼくは振らないようにしてますけど」
「ストライクって言われちゃうだろ?」
「はい」
「振ればよかったなって思います。ストライクならミートできたなって」
「平松のシュートはストライクゾーンにくるから見逃せないんだ。曲がり幅はボール一個分とそれほど大きくないんだが、右打者の手もとでグッと食いこんでくる。バットにヒビが入ったり折れたりしちゃう。やっぱり金太郎さんがいつも言ってる〈前に出て打つ〉という方法しかなくなる。じつは金太郎さんは平松の外に逃げるシュートをそんなに見逃してないよ。前に出てよく打ってる」
ガードをくぐりケヤキ並木に入る。古川耳鼻咽喉科、装苑日本堂(何の店だ?)、ハラノ不動産、質塚本、合いカギ。
「菱は開眼した。今年は江藤さん以上にホームランを打つよ。五番を打たせるように水原監督に進言しておいた。俺は六番が気楽だ。三割三分、ホームラン四十本。怖い六番バッターになれる。三番江藤、四番神無月、五番菱川、その三人で二百本は打つ。そこへ中高木の一番二番、俺太田一枝の六番七番八番で百五十本。最強のドリーム打線で何百年も伝説として残る。水原監督が引退するまでの大花火だ」
「すばらしいですね!」
大原市場を通り抜け、竹園に帰る。そろそろ六時半。一階の一般共用のカフェレストランに入る。だだっ広い店内。真ん中に二十人掛けの長卓。脇に四人掛けや六人掛けの広いテーブル。店の入口から奥までを占める調理カウンター。二十人以上の客がいるが、混んでいる感じはしない。一般客に混じって、小川と小野を中心に投手陣のほとんどがいる。野手陣はいない。手を挙げ合う。四人掛け卓の一つに席を取り、女店員に注文する。コンボプレートというのにする。
「五品から二品お選びください。神戸牛炭火焼、淡路島朝挽き鶏、兵庫産ポークロース、アメリカロース、オーストラリアヒレ。どれも百五十グラムでございます」
私は神戸牛とポークロース、木俣は神戸牛とオーストラリアヒレ。
「六種類のソースからお好きな二品をお選びください。デミグラス、おろしポン酢、天然塩、鉄板たれ、甘辛たれ」
二人とも鉄板たれ一品にした。
「添え物は、目玉焼き、手作りベーコン、エビフライ、ソーセージのうち一品を」
私は手作りベーコン、木俣はエビフライ。
「パンとライス、どちらになさいますか」
二人ともライスふつう盛り。ほかに野菜サラダと生ビールの中を二人前頼んだ。小川の声がする。
「田辺、あしたは控えの打撃陣先発で五回までいくはずだから、援護なしの覚悟で前半を五点以内に抑えんといかんぞ。後半は金太郎さんたちが十点は取ってくれるし、小野親分が締めてくれるからな」
「はい、がんばります」
私は木俣に、
「五回の裏の守備から代わるということですね」
「だな。打ちまくろう」
「はい」
ジョッキを打ち合わせる。
十七
歯を磨き、満腹のからだをベッドに横たえる。手にアクロイド。
アクロイド氏が殺されたと執事のパーカーから電話がある。アクロイド家へ駆けつけると、パーカーはそんな電話をした覚えはないと言う。アクロイド氏の書斎へいくと鍵が内側から閉まっている。呼びかけても返事がない。樫の木の椅子を叩きつけて強引に鍵を壊して入る。椅子に座って前屈みになっているアクロイド氏の首のすぐ下に刃物が突き刺さっている。警察に連絡する。ブラント少佐がやってきて死体の顔を覗きこむ。貴重品は盗まれていないが、フェラス夫人からきた手紙が消えている。これでこの作品が長編小説になる下地ができた。こうやって推理小説というのは引き延ばしていくのか。
犯人は窓から入って窓から出ていったと警察は結論づける。窓の下の地面に靴跡が残っていた。靴跡の特徴が事件の真相に関わっているようだ。
家の者たちの証言から、アクロイド氏は医師が帰ったあと、声だけ聞こえてきた男一人と(そいつは金をゆすっていたらしい)、フロラ嬢に会っていたとわかる。つづいてアクロイド家の間取りの説明が始まる。推理好きの読者はメモをとって読むのだろうか。推理物の読書には大切な作法だと理解できるが、私は読み飛ばす。
フロラ嬢の証言取り。フロラ嬢の失神やら、セシル夫人の看護やらすったもんだ。八時を回っている。いったん栞を挟み、テレビを点ける。八時だヨ!全員集合。森進一、ピンキーとキラーズ、都はるみ、辺見マリ。加藤茶が一人でがんばっている。落ち目のクレージーの代わりに出てきたグループ。替える。落ち目のコント55号。ゲストは藤圭子、東京ロマンチカ、替える。素浪人花山大吉、近衛十四郎の剽軽な雰囲気を好まない。替える。もう一度アクロイド。
凶器は飾り棚にしまってあったギリシャ製の短刀だとわかる。秘書、執事、家政婦、大佐、医師入り乱れての尋問。読むのに時間が食う。パーカーが第一容疑者になったと、帰宅した医師が姉に話すと、バカバカしいと一蹴された。
本はダッフルにしまい、ふたたびテレビに戻る。サンテレビ、江戸川乱歩シリーズ、謎解きが終わったようなので替える。キーハンター、ズバリ!あてましょう、通信高校講座英語A、土曜映画劇場。テレビを消してラジオを点ける。NHK第一。土曜日なのでトーク番組のようなものをやっている。聞くともなく耳を傾けているうちに、寝入った。
ごそごそと掛布に入りこんでくる気配ですぐ目覚めた。
「フフ、このあいだと同じですね」
深い口づけ。
「お口がいいにおい」
「歯を磨いたから」
ラジオを消し、掛布を剥いでハツの両脚を拡げる。黒い蝶の襞を確認して舌を這わせる。
「ああ、気持ちいい、愛してます」
ふるえが強くなったので尻を持ち上げて陰核を吸う。
「あ、イキます、イク!」
秘核を唇で包みこんで吸い上げながら舌先に硬直を味わう。唇を離し、下腹に頬を当てて数度の痙攣を受け止める。
「ああ、心から愛してます」
挿入する。カズちゃんたちよりは少し時間がかかるが、ほどなく膣が急に狭まり激しい収縮がやってくる。枕を咬んでアクメの発声を控えながら陰阜を跳ね上げ、強くからだを痙攣させる。五度、六度、十度と膣が収縮する。
「あああ、ください! 愛してますゥゥ、イクウウウ!」
吐き出す。背中を掬い上げるように抱き締める。止まない痙攣を数分堪能する。膣の動きが弱まったところで深い口づけをする。すっかり膣が活動をやめたのを潮に、離れて並びかける。ハツはすぐにティシュを股間に押し当てる。
「ハアア、ありがとうございました、ほんとうにありがとうございました、どんなに言っても言い足りないほど愛してます。お逢いするとがまんできなくなりますけど、ふだんはちっともこんな気持ちにならないんですよ。あしたは試合日なので、お訪ねしません。きょうは十二時に帰ります」
「あしたは休み?」
「はい。あさってはチェックアウトしたらすぐお帰りになるんですね」
「うん。名古屋に帰る仲間たちと」
「私は朝からですからお見送りできます」
「風呂へ入ろう」
「はい。客室のお風呂に入るのは初めてです」
磨りガラスのドアを開けて右手に大きな洗面台、左手に水洗トイレ。ハツはそこへティシュを捨てて流した。もう一枚の磨りガラス扉を開けて入るとタイル貼りの湯殿、陶器の大きな浴槽。私は腰に手を当て、萎えない性器を壁に向けて高く放尿する。ハツは秘部を洗いながら、
「ま、お茶目。まだ治まらないんですね。……お風呂のあとでいただきます」
「いますぐできるよ」
「ほんとですか!」
浴槽に湯を貯えながら、ハツは私の性器をシャワーで洗い、口に含む。
「あそこをしっかり見せて」
「はい」
ハツは湯殿しゃがんで開脚しようとする。
「そうじゃなく、ここに腰をかけて」
浴槽の縁に腰を下ろさせ脚を開く。
「そんなこと……恥ずかしい」
快楽のあとで少し腫れたクリトリスが蝶の小陰唇の頂点に鎮座している。
「見るのは二度目だね。相変わらずきれいなオマンコだ」
「うれしい……」
大きな乳房に張りがあり、下腹は脂肪が削れている。
「どんなふうにオシッコが出てくるのか、見せて」
「え……それは……恥ずかしすぎます」
「ハツの何もかも知っておかないと」
「……わかりました。やってみます。これも五十三年間生きてきたおかげで経験できる楽しい恥ずかしさです。子供に戻ったよう」
私は湯殿にあぐらをかいて正対した。小水が蝶の翅を左右に押し開き、翅をふるわせながら出てくる温かい水が私の下腹に飛んだ。
「ごめんなさい。あとですぐ洗います」
小水が止まない。
「気にしないでしっかり出して。ぼくは気に入った女にはかならずこれをしてもらうんだ。そういう女はみんなハツみたいにオマンコが敏感なんだ。オマンコの反応は女の第二の人格だからね。男には複雑な反応なんかない。射精だけだ。男の第二の人格は脳味噌にある」
ハツは水切りを終えると、クスッと笑い、
「男も女も第一の人格はどこにあるんですか」
「胸だね。情熱」
蝶の翅を引っ張る。
「ああ、神無月さん……」
胸を揉み、乳首を吸う。ハツはじっと目をつぶり、感覚に浸っている。私は股間に屈みこみ唇と舌の愛撫を与える。すぐに訪れる。
「神無月さん……好き、好きです、あああ、イク!」
包皮からおもむろに出てくる陰核を舌先に味わう。
「後ろからしよう」
「はい」
ハツは蛇口の栓を閉め、のろのろ立ち上がると湯殿の壁に手を突いて中腰の尻を向けた。私は両手で尻を割って、濡れそぼった長い小陰唇を見定め、ゆっくり挿入する。長い翅がぴったり包みこむ。
「あああ、神無月さん、気持ちいい!」
膣壁が一瞬収縮し、名残の小便が飛んだ。往復する。
「はああ、オマメさんがピリピリします、すぐイキます、神無月さん、好きです、ほんとに好き、愛してます、イキますね、イキます、あああ、イクイクイク、イク!」
全身の筋肉を絞り、尻をひくつかせながら荒く呼吸する。抽送を速める。
「すごい! イク、何度もイキます、イクイク、イク!」
今度も五回、六回とアクメを重ねる。放出が迫る。ハツも感じ取る。
「あ、神無月さん、いっしょに、いっしょに」
「ハツ、イクよ!」
「私もイク! うううん、イックウ! 好きいいい! イク! いや、イク! あ、イク! イクイクイク、イク! あ、だめだめ、イッ、イック!」
グンと大きく尻を突き出す。陰阜の激しい前後運動も、膣の強い摩擦も去年の夏の最初のときと同じだ。腹を抱え、ぴったり密着して律動する。
「あああ、愛してます、好き、死ぬほど好き、クウウ、イク!」
一分ほども痙攣をつづける。すべて放出し終えた私は、ハツの腹をさすりながら自動的な引き攣れが鎮まるのを待つ。抜き去ると、ハツは奇妙な声でうめき、精液を股間から滴らせる。やがて立ち上がり、自分と私の全身にシャボンを使った。それがすむと、二人抱き合って湯に浸かった。
「幸せ……」
私にとっての一日は、この女の千秋だ。胸が痛む。
「泊まってく?」
「いえ、それはいけません。こうして神無月さんの胸に抱かれて一夜をすごしたいのはやまやまですけど、帰ります。私のわがままから、神無月さんがへんな責任をとらされる羽目になったらたいへんです。―人間の重みがちがうんです。どれほど大勢の人に愛されてるか、どれほど大勢の人に貢献してるか、計り知れない人です。神無月さんの重みはふつうの人の数百倍です。そんなかたの未来を私ごとき女のいっときのわがままで台なしにしたくありません」
齢のせいで少し緩みはじめた豊頬を引き締める。
「ベッドでいっしょにテレビを観てから帰ったら? ぼくもそのほうが眠くなる」
「この時間はとりとめのない番組ばかりですよ。このままラジオでも聴きながら眠り薬にしてください。八時半までに起きないと、あしたがたいへん。一階のカフェでモーニングを食べて、十時までには支度を終えてないと。西宮球場までバスで二十分です。十時二十分に出発と聞いてます」
「うん、十時五十分からフリー開始だからね」
自分の配慮が赤ん坊のものだとつくづくわかる。その配慮を微笑で許されているカズちゃんたちとの生活をしみじみと思う。ハツは湯から上がり、からだの水気を丁寧に拭い取ると、ベッドの傍らでパンティとワイシャツをつけはじめた。カズちゃんたちを眺めるのと同じように眩しかった。私は新しいパンツをダッフルから取り出して履き、ベッドにもぐりこんだ。ハツは私にキスをし、
「お休みなさい。できればラジオも聴かないでこのまま目をつぶったほうがいいですね」
と言って、こっそり廊下へ出ていった。
†
三月二十九日日曜日。七時四十分起床。カーテンを引く。雲がないので果ての見えない淡灰の空だ。九・五度。うがい、歯磨き、軟らかな快便、シャワー。食券を持ち、ジャージに館内スリッパで、一階のカフェレストランへ。廊下で次々と仲間たちに遇う。太田が私たちのコロッケ無料券を受け取り、一人精肉店へ向かう。
「あの肉屋はすごく混んでるんで、少しカフェへいくのが遅れます。神無月さん、俺のめしも注文しといてください。同じものでいいです」
太田は一足早くエレベーターで一階に降りた。私たちも少し遅れてエレベーターに乗る。フロント横からカフェに入る。ここは、白ワイシャツに灰色のチョッキ、黒スカートの従業員たちが立ち働いている。
中と私は鮭と卵焼きメインの和食プレート、めし大盛りで七百四十円。高木と一枝はカレーとソーセージメインの洋食プレート七百十円。江藤と菱川と木俣は土日限定のステーキプレート九百十円。私たちが食事中にやってきた投手組は田辺のステーキプレートを除いてみんな洋食プレートだった。プレートを待つあいだに、周囲のカウンターに並べてあるサラダや〈おばんざい〉を取りにいく。たいてい一般客だが気にならなかった。人前を作らない男たちといっしょにいるからだ。
部屋に戻って十時までアクロイド。
医師の家をフロラが来訪し、隣人のポワロに事件の調査を依頼したいが、事件の詳細を知っている医師みずからに仲介してほしい、警察に疑われているラルフの無実を証明したいのだと言う。医師とフロラはポワロに会い、ポワロの提案で警察にいくことになる。ポワロは警察の威信を失わないように陰ながら捜査の仕事を手伝いたいと言う。署長は快く了承した。
ポワロは警察といっしょに現場検証をする。緻密な推理が始まる。続々と推理のための小道具(証拠品)が予期せず現れる。ガチョウの羽根やら、金のブローチやら(じつは結婚指輪だった)唐突すぎて、どこから出てきたのだという感じだ。容疑者の数も好きなように増えていくし、推理の緻密さもあらかじめ用意していたもののようでしっくりこない。
テーブルを囲んでの合同審問となる。審問? 裁判ではなく、警察とポワロを中心にしての〈話し合い〉のことか? 栞にする。
ユニフォームを着る。手をつないでいっしょに生きていく私たちの制服。これを着ないと、生きている意味が皆目わからなくなる。これほど純粋でハイレベルな世界に生きていられるのに、余計な活字でその世界を荒らす必要はない。彼らとの会話と、交情と、喜び悲しみだけでじゅうぶんだ。
十八
十時二十分、跨線橋下に停めてある阪神バスに乗りこみ出発。窓外風景にはとんと興味がなくなったけれども、地名の確認を習慣的にしてしまう。大原町、上宮川橋、上宮川で左折、国道2号線に入る。山打出、楠町、森具(もりぐ)。中が、
「このあたりは森具村と言うんだが、むかしは夙村と呼んでたようだ。しゅくに守具の字があてられ、明治以降にもりぐとなったらしい」
どうでもいい知識だが聞いていると愉しい。夙川橋、神楽町、産所(さんしょ)町。
「中さん、これは?」
「さあ、ちょっとわからないな」
水原監督が、
「戎信仰の拠点の西宮神社のお札を傀儡子(くぐつし)という人形使いが全国に広めて廻ったんだ。彼らの根城の集落を散る所と書いて散所と言った」
愉しい。西宮郵便局前、札場筋(なるほどなあ)を左折。江上町、城ケ堀町北を右折。山手幹線に入る。宇野ヘッドコーチがスタメン発表。
「一番江島、二番省三、三番谷沢、四番千原、五番坪井、六番新宅、七番伊熊、八番西田、九番田辺。五回裏から中、高木、慎一、神無月、菱川、木俣、太田、一枝に打順そのままで守備交代。ピッチャーは小野に交代。小野以降の継投はまだ決めていない」
中前田町南、西宮警察署北、両度町南。二度? 多度山といわれが似ているのかもしれない。だれも何も言わなかったので、私も尋ねなかった。両度町東、高松町南、西宮球場到着。
九階建て、白亜の美麗な外観だ。甲子園球場まで約三キロ。収容人員四万五千人以上。正面入口を入る。守衛室の前を通って左手の通路へいく。天井にシャンデリア。周回ゾーンを回って三塁側に向かう。天井が低い。役員室、記者室、食堂、喫茶室、床が砂の素振り室、ミーティング室、広いロッカールームと歩いていく。
このロッカールームが気に入っている。ロッカーは枠組みだけのサッパリしたもの。長椅子に坐りスパイクに履き替える。いつものとおり、滑りこみパンツと金カップはつけない。ドラゴンズの選手は木俣以外は金カップをつけない。滑りこみパンツはほとんどの選手が穿く。二つとも装着しないのは私だけだ。
グローブとバットを二本持つ。ロッカールームを出る。隣に便所と風呂。いちおうタイル貼りだが、四、五人しか入れない狭いもの。ベンチに入る。あと五分でドラゴンズのフリーバッティング開始なので、ブレーブスの選手たちは一塁ベンチに引っこんでいる。明るいグランドに上がる。
満員のスタンド。リーグを制覇するほどほど強いチームなのに、平日の観客席はガラガラだそうだ。右往左往する新聞記者たち。監督コーチ連。オレンジとグレイのスコアボードが目に飛びこんでくる。三段重ねの積み木のようだ。外野の二基の照明灯の看板は、阪急百貨店とエクスラン。天蓋付きの日本初の二層の内野席(三塁側には天蓋なし)が点描画のように美しく見える。両翼百一メートル、十メートルほど手前にラッキーゾーンがあり、両チーム二人ずつのピッチャーがポール方向へ投げている。フェンスぎわは全周オレンジのアンツーカー、外野とファールゾーンは天然芝。一層の内野スタンドにポチポチ空きがあり、天蓋付きの一層の外野席のほうは満員だ。江藤たちと走り出す。喚声が湧き上がる。太田が、
「ダッグアウトの屋根の横のほうに、ベンチ入りの選手の名前を書いた板が並べてあるの知ってました?」
「いや。知らなかった」
「代打でだれが残ってるとか、リリーフはだれがいいとか、お客さんにそういう楽しみがあるわけです。かなりマニアックですよね。見る人はかなり少ないと思いますけど」
鏑木コーチの手拍子で、五十メートルダッシュ三本。最後のオープン戦だと思うと力が入る。門岡をバッティングピッチャーにして打撃練習。五本打ち、ライト、センター、レフトに一本ずつ打ちこむ。残り二本は高く上がる凡フライ。外野に回って球拾い。歓声に背中を押される。控え陣が次々に打っていく。谷沢と千原が当たっている。練習と本番はちがうが、精々がんばってほしい。
ケージが片づけられ、阪急の守備練習になる。ダッグアウトの椅子に座って、ロースカツサンドを食う。高木と中も別な種類のサンドイッチを食っている。ほかの選手は食堂へいった。
ドラゴンズの守備練習。私たち後発組は参加せず。スタンドがふくれ上がった。空席はいっさい見えない。水原監督と西本監督のメンバー表交換。球場を見回す。赤い彩りがうるさいが、スタンドの落ち着いた色調のせいでどうにか中和されている。私は江藤に、
「玄人は機動力重視、素人はバッティング重視というのはほんとうですか」
「まことばい。ファンには巨人、広島は玄人、中日とパリーグは素人と映っちょる。ばってんどうでんよか。勝負の世界、勝てば玄人、負ければ素人たい」
トンボが入り、白線が引き直される。ウグイス嬢の声。
「本日は西宮球場にご来場いただき、まことにありがとうございます。間もなく阪急ブレーブス対中日ドラゴンズのオープン戦を開始いたします。両チームのスターティングメンバーを発表いたします。先攻中日ドラゴンズ、一番センター江島、センター江島、背番号12、二番セカンド江藤省三、セカンド江藤、背番号28、三番ファースト谷沢、ファースト谷沢、背番号14、四番レフト千原、レフト千原、背番号43、五番サード坪井、サード坪井、背番号60、六番キャッチャー新宅、キャッチャー新宅、背番号19、七番ライト伊熊、ライト伊熊、背番号25、八番ショート西田、ショート西田、背番号39、九番ピッチャー田辺、ピッチャー田辺、背番号33。対しまして、後攻阪急ブレーブス、一番センター福本、センター福本、背番号40、二番ショート阪本、ショート阪本、背番号4、三番サード森本、サード森本、背番号9、四番ライト長池、ライト長池、背番号3、五番レフト大熊、レフト大熊、背番号12、六番キャッチャー岡村、キャッチャー岡村、背番号29、七番ファースト石井晶、ファースト石井、背番号6、八番セカンド山口、セカンド山口、背番号1、九番ピッチャー山田、ピッチャー山田、背番号25。審判は、球審寺本、塁審一塁前川、二塁岡田、三塁斎田、線審ライト富澤、レフト道仏、以上でございます」
ブレーブスの選手たちが守備に散った。しばらくの静謐。山田の投球練習。
「ただいまより、第六代芦屋市長渡辺万太郎による始球式を行ないます。どうぞみなさまご注目くださいませ」
学者眼鏡をかけ、髪を八二に分け、額の真ん中に釈迦ぼくろのある六十代の温顔が、一塁ベンチ脇の通路から秘書らしき青年と前川塁審に導かれて現れた。有名な人物らしく、喚声と拍手が上がる。濃紺の背広にネクタイを締めている。岡村がキャッチャーボックスにしゃがみ、江島ではなく中がバッターボックスに立った。市長は背広を脱いで秘書に渡す。秘書からグローブを、山田からボールを渡されると、四囲に愛想を振りまくこともなく、すぐに振りかぶりヤッと放った。山なりのボールがツーバウンドして岡村のミットに収まる寸前、中がみごとな空振りをした。市長はようやく周囲のスタンドに向かって両手を挙げた。さらに大きな拍手。市長は山田と握手し、マウンドから降りてきて岡村と中と握手した。長池と森本が一塁ベンチから走り出てきた。
「金太郎さん、江藤くん、高木くん、いってあげてください」
私たち三人もホームベースの前に走っていった。一人ひとり市長の握手を受ける。みんなをまねて、私もわずかに腰をかがめた。市長は私の手だけを両手で握った。いっそう大きな拍手が上がった。
「それではただいまより試合開始でございます」
爽やかというのではなく、弾むような低い声だ。ベテランだろう。下通の声ほど明るく澄みわたった声はない。開幕が待ち遠しい。
「一回表、中日ドラゴンズの攻撃は、一番センター江島、背番号12」
山田久志は大きく振りかぶり、極端に丸く前屈みになり、アンダースローの腕を大きく振って快速球を投げてきた。手首の叩きがハッキリ見えた。真ん中低目ぎりぎりのストライクだ。江島は力まずパチンとコンパクトに打ち返した。打球はあっという間にピッチャーの頭上を越えてセンター前へ抜けていった。杉山コーチが、
「そりゃきた! 潰すぞ!」
二番省三、初球真ん中低目速球ストライク。一瞬前に江島が走っていた。岡村が矢のような送球をする。間一髪セーフ! 江島がまじめな顔で尻の泥を払い落とす。猛烈にアピールしている。水原監督が江島に向かってパンパンパン。二球目外角低目カーブ、省三は食らいついてライト前へ痛打。江島生還。たちまち一点。中が、
「タクミが盗塁できるなら、うちの野球にグンと機動力がつくぞ。私はこのごろ走らないからね」
高木が、
「サイン決めとかんといかんな。利さんとやるみたいにアウンではいかんから」
三番谷沢、外角シュートを二球見逃し、ツーナッシングから内角高目の速球に詰まってセカンド後方にポテンヒット。江藤が、
「ヨッシャー、畳みこめェ!」
ノーアウト一、二塁。四番千原、内角速球を二球つづけてバックネットへファールしたあと、外角シュートを引っかけてショートゴロ、6―4―3のゲッツー。ツーアウト。一枝が、
「陽三郎はバットのコネクリを直さんとな」
「コネても太田みたいにバットスピードがあればいいんだが……。まず狙い球を絞ることだろ」
中が言う。三塁に省三が残る。小兵の五番坪井。菱川が、
「神無月さん、こいつはどうですか」
「下半身が敏捷でないので、よほど走りこまないと光は見えてこないですね」
初球から内角低目のストレートを打って出て三遊間を抜くヒット。二点目。
「たしかに上半身だけで振ってますね」
六番新宅、一球外角カーブを見逃し、ワンナッシング。二球目内角シュートわ思い切り振ったが、詰まってサードゴロ。チェンジ。二対ゼロ。打者六人で二点。まずまずの出だしだ。
星飛雄馬田辺修、二十五歳。近鉄に七年在籍して二十一勝。いまひとつ羽ばたけない男だが、ストレートに威力があり、変化球も切れがいい。万能型。中日で花開けば、十勝はできる。きょうは開幕に向けて最終調整だと思って投げればいい。
「一回の裏、阪急ブレーブスの攻撃は、一番センター福本、背番号40」
すりこ木のように握りの太い重そうなバットを短めに持っている。構える姿勢にすでにバネがある。初球真ん中高目、空振り。速いスイングだ。ミートしたら中さんと同じように飛んでいくとわかる。二球目外角へ落とすパワーカーブ。コキーン! センター前へするどい打球が滑っていく。達人のにおいがする。
二番阪本。田辺は、一塁に足の速い福本を置いて、セットポジションからあまり足を上げずに放ったが(スライダー、ストライク)、スルスルと走られてしまった。短距離走者のように背中を丸めて疾走する。小さなからだを縮め二塁ベースに鉄片のように吸い付いた。新宅は暴投を恐れて送球しなかった。
―なんじゃ、こりゃ!
「ベースが磁石みたいやのう」
「警戒しろ。三塁へいくぞ!」
阪本がヒットを打てばもちろん生還だが、内野ゴロでは還れない。外野フライでも生還は無理だ。外野フライで一点取れるように三塁へいくはずだ。離塁が大きいので田辺が牽制した。福本は軽く戻る。一球目、走った! 新宅はあえて中腰に構えてストレートを投げさせ(真ん中高目、ボール)、全力で三塁へ送球したが、セーフ。この男を塁に出してはならない。バッターボックスで打ち取るしかない。ワンナッシング。スクイズはない。外されて失敗したら三塁走者が死ぬこともある。内野が前進する。深い内野ゴロでは一点取られるからだ。二球目、インハイストレート、スクイズ! キャッチャー小フライ。よし! しかし福本はすでに三塁に戻っていた。天才だ!
三番森本。ここも前進守備。初球外角カーブ、引っかけた! ゆるいセカンドゴロ、福本が突っこんでいく、だめだ、一点取られる。うまい! 省三がふつうより三メートルも前にいる! 捕球、ホーム送球、滑りこみ、タッチ、アウト! よし、よくやった。ハリケーン一過。ツーアウト、ランナー一塁。
「省三、グッド!」
兄が叫ぶ。水原監督が、
「三番バッターになぜスクイズかね。取っても一点。外野フライでも一点取れたんだよ。ホームランだったら同点だよ」
これで玄人は喜ぶそうだから世話はない。
「四番ライト長池、背番号3」
心なしか喚声が小さい。初球外角スライダーを引っかけてピッチャーゴロ。チェンジ。
二回表。水原監督が三塁コーチャーズボックスへ小走りにいく。ここで決めてくれという意思表示だろう。七番伊熊。菱川が、
「攻走守揃った大型外野手か。期待されてドラ一入団した男だったのにな」
江藤が後列に座っている水谷則博を振り向き、
「おまえの先輩やろう。高校のときは打ったんか」
「はい、春夏連覇したときの四番でした。プロに入ってからパタリですね。なぜか俺にもわかりません」
木俣が、
「バッティングアイ、それ一本。致命傷だ」
速球にやられて三球三振。八番西田。谷沢が、
「早稲田の二級先輩です。大学、社会人と活躍した人なのでやってくれると思います」
四球目のカーブを打ってショートゴロ。九番田辺、初球を打ってサードゴロ。水原監督が寺本球審のところへ歩いていく。
「中日ドラゴンズ、守備の交代を申し上げます。ライト伊熊に代わりまして太田、背番号5、ショート西田に代わりまして一枝、背番号2、レフト千原に代わりまして神無月、背番号8」
ウォーという喚声。守備位置へ走っていく。江島とキャッチボール、江島は太田とキャッチボール。
「男前ェ!」
「格好ええどォ!」
「ぜんぶホームランいけ!」
声援が激しいので帽子を取ってレフトスタンドに礼をする。大きな歓声。二回裏。まだ安全だろう。