九十七

 登校の道は、名古屋駅へあわただしく急ぐばかりで、何の趣もなかったけれども、夕暮れの帰り道は、どこかの梢で鳴いているヒグラシの声を聞いたり、民家の庭先で鳳仙花の実の弾ける音が聞こえたりして、少しばかりの慰めがあった。
 休日になっても、散歩すら許されなかった。休日はタケオさんがお守り役だった。彼は感じのいい人物だった。浪人という身分は、寝ても覚めても、一日じゅう勉強をしていなければならないものらしく、彼が廊下の障子を開けて出ていくところをめったに見かけなかった。ある意味、彼も私と同様、軟禁状態だった。
 彼はいつも明るかった。ある日曜日の夜、休日出勤をしている浅野の留守に、タケオさんが襖からひょいと顔を出し、
「おいで、レコード聴かせてあげる」
 と部屋に誘った。網戸を閉めた空に星が淡く瞬いている。窓の外は裏庭らしく、痩せたヒマラヤスギの葉先が見えた。タケオさんはニキビ面に微笑を浮かべながら、小振りなステレオでレコードをかけた。プレスリーの涙のチャペルだった。次にフォー・シーズンズをかけた。初めて聴く美しい曲だった。しばらくポップスを聴いていなかったので、一心に耳を傾けた。
「きれいなメロディですね」
「アメリカのヒットチャートでいま一位をつづけてる曲だよ。ラグ・ドール。ボロ人形って意味。貧乏な女の子に恋する男の子の話だ」
 タケオさんは澄んだテノールで、レコードに合わせて歌った。私がうなだれてじっと聴いているので、
「気に入ったみたいだね。あげるよ」
 とEPのジャケットを差し出した。
「いいんですか」
「もちろん。それとも、新しいレコードを買ってあげようか?」
「いいえ、これでいいです」
 いつ聴けるかわからないけれど、自分のステレオでじっくり聴いてみようと思った。
 タケオさんの部屋には自分用のテレビも置いてあって、家の人たちが彼に気を使って贅沢な浪人生活をさせていることがわかった。彼がテレビを点けると、西郷輝彦が青い背広姿で歌っていた。
「十七歳のこの胸に、か。やっぱり歌謡曲はピンとこないな。日曜の八時に逃亡者っていうおもしろい番組があるから、観においで」
「先生がいいって言ったらね」
「どうせ下で兄さんも同じものを観てるんだ。何も言わないよ。おっと、そろそろ兄さんが帰ってくる時間だ。部屋に戻ったほうがいい。この家は、兄さんが一番だからね」
         †
 何日も浅野家の家族を観察して暮らした。散歩もできない身では、そんなことをするしかなかった。飯場の人たちに親しんだ目に、彼らは機転の利かない無趣味な人びとに映った。彼らは冗談も言わなければ、抽象的な人間分析もせず、芸能人と社会的事件と天気と仕事の話ばかりした。ささやかなりとも苦悩と呼べるものは生活のそればかりで、目が常に世間に向いていた。せめて顔かたちだけでも際立った点はないかと考えて観察をつづけたが、収穫はなかった。みな美しくなかった。反っ歯の小山田さんでさえ彼らに比べれば思索の深みを偲ばせるイイ顔をしていた。どこからどう見ても彼らは、飯場の人たちとはまったく生きている次元も姿かたちもちがうのだった。
 燃料の販売を生業にする浅野の父母は、客がきたとき以外はどこかの部屋に引っこんでいて、一日何をしているとも知れなかった。平日も休日も、いっときにぎやかになるのは食卓だけで、私はそこで目立たないように箸を動かし、母親の立てた風呂を使い、静かに二階に上がって、深夜まで律儀ぶって机に向かった。むろん、彼らは私にあれこれ話しかけたし、私もそれなりの応答はしたけれども、それだけのことだった。どこにも接点を見出せないこの人たちとうまくやっていくには、とてつもないエネルギーを必要とした。私は疲労した。
 監視はいつまでも途切れなかった。もちろん私には道草の暇などなく、カズちゃんに会いにいく時間はなかった。教室の机に座っているとき、グランドでボールを追いかけているとき、浅野の視線に背中を刺されながら古机に向かっているとき、そして寝床に入ってからも、絶えずカズちゃんを思いつづけているせいで、何かをしゃべったり何かをしたりすることに意識が戻っていくためには、えい、と踏ん張るような努力が必要だった。
 しつこい監視と、ひとりの女への恋心に枷をはめられながら、私は毎日本を読んだ。まるで復讐か何かのように、活字の深みに溺れこんだ。浅野の書棚にある本も、片端から読んだ。されどわれらが日々、おれについてこい、行為と死、虚構の唇……。彼が並べている本は、いまどき話題になっているようなものが多く、心を轟かせるような巨きなものを望むにはほとんど役に立たないものばかりだった。
 毎夜、浅野が寝入る時間になると、私は一日の深い疲労感を覚えた。それは寝不足のためでもなければ、野球や勉強や読書のためでも、そして、カズちゃんと引き離されたためでもなかった。言動の一つ一つが監視の的になっている窮屈さに激しい疲れを覚えはじめたのだった。妥協にまみれた、それでいて神経の張りつめた毎日が重荷になってきた。浅野はいつもぐっすり眠りこんで、目を覚ますことはなかったけれど、そのいぎたない寝姿を見るときにも、いよいよ疲れが増した。
 私は深夜の机に向かい、ことばノートに疲れた詩を書いた。すると、無気力に思われていた自分の心臓が、絶え間なく、活発に動いていたことに気づくのだった。

  陽は照るままに照り
  英雄のようだった!
  運動と学業と
  その子の誇りだった
  ああ 扶翼の韻律が胸に萌え
  年たけた女をかたみに愛するまでは

 そんな絶望と希望がない交ぜになっている詩を毎晩書いているうちに、やがて、北村和子に対する自分の執着に怒りを感じはじめた。そして、この分別のない執着のせいで、愛する人間を遠ざけてしまったのだと確信するようになった。
 同級生たちは、私が高みから転げ落ち、ふたたび高みを目指すのをとっくにあきらめてしまっていると感じていた。康男だけはそう思わなかった。
 ―自分のせいであいつはつまらない拘束を受ける成りゆきになってしまったが、あいつならそんなことには負けないで、いずれ明るい万能ぶりを取り戻すだろう。
 寺田康男はいつも胸を痛めながらそう思っているにちがいなかった。いつも教室の隅から遠慮がちに、友のうっ伏した背中を見つめて憤っているにちがいなかった。学校なんかいつやめてもいいけれど、あいつのことだけが気にかかって去りがたいと思っているにちがいなかった。
 そんなある日、別棟の技術家庭の授業が解散したあと、加藤雅江が廊下を走ってきて、私の前に回ると大きくからだを揺すりながら方向転換した。張り切っていた。
「練習終わったら、いっしょに帰ろ。浅野先生に頼まれちゃった。白山の中学校で出張会議があるから、遅くなるんだって」
 きょうは浅野と帰らなくてもいいのだという喜びが電流のように走った。ただその電撃はあまりにとつぜんやってきたので、この幸運をどう活用すればいいのか、とっさに思い浮かばなかった。
「神無月くん、いま浅野先生のとこに下宿させられとるんでしょう? 何か悪いことしたの?」
「ああ、たぶん。毎日、夜遅く帰ってた」
「見舞いのせいやね」
「……いろいろと、ね。義理と人情だよ」
「寺田くんと夜遊びしとったってこと?」
「遊んではいないよ。一言では説明しにくいな。とにかく、なるようになったんだね」
「悪い結果が出ちゃったんやね。……でも、お仕置きされるってことは、浅野先生によっぽど気に入られとるんやね。寺田くんよりは見こみがあるってことでしょ?」
「関係ないね。オフクロに頼まれて、仕方なく預かったんだ。毎晩、あいつと枕並べて寝るよ。ゾッとする」
「神無月くん、なんだか、むかしとぜんぜんちがってまったね」
「どこが」
「……みんな、神無月くんのこと、心配しとるんよ」
「みんな? ぼくのことなんか、だれも心配するはずがないよ。心配というのは、その人のために痩せ細るほど気を揉むってことだよ。心配しすぎて、命を失うこともあるかもしれない。人間なんてせいぜい、心配が実現しないようにと願うだけさ」
「また、そういうことを言う。じゃ、神無月くんを下宿させた人たちが〈実現しないように〉と願っとることは、なに?」
「進学の失敗だね。進学なんて、ぼくの人生の目的じゃない。きざなことを言うようだけど、ぼくは社会的目的というものを持ってないんだ。野球で生きたいというのは趣味的なもので、社会的と言うのはオーバーだ。でも、お金をもらうという意味では、社会的な目的に属するのかもしれない」
「じゃ、神無月くんの人生の目的って、なに?」
「……社会の群衆とは関係のない、個人的目的かな。自分を愛してくれる者だけを愛するという……それが叶えば、社会的な成功は要らないな。……もともと、高校なんかいく気はないんだ」
 心の底にあったことを言った。
「本気?」
「……ぼくの理想は、中学出たら働くことだ。好きな人のためにね。でも、そういうことで周囲に波風を立てたくないから、結局高校にいくことにはなるだろうけど、少なくともそれはぼくの思いどおりの生き方じゃないね」
「そうできるのにそうせんのを見て、心に波風の立たない人なんかおらんわ。……好きな人がおるの?」
「いたっておかしくないだろ。知恵遅れじゃあるまいし。じゃ、いっしょに帰る前に、グランドで一汗流すか」
 加藤雅江は練習のあいだじゅう、何度もテニスコートから上がってきて、気もそぞろに私の行動を窺っていた。このごろでは、私はバッティング練習をほとんどしない。どんな大きい当たりを飛ばしても、チームメイトにはべつに目新しいことでないし、だれかその関係の人間が見ているという可能性もない。張り合いがないのだ。だから、守備練習ばかりしている。外野に転がってきたボールをタイミングよくすくい上げ、渾身の力でセカンドやホームへ投げ返す。そんな単純作業を、彼女はからだいっぱいに責任感をたたえて見守っていた。加藤雅江はトレパンを穿いていた。テニス部員の中でトレパン姿は雅江だけだった。早く暮れていく秋の陽が彼女の傾いた影を長く引き、いっそう激しいアンバランスを目立たせていた。


         九十八

 加藤雅江は熱田駅までついてきた。伏見通りの坂から、外苑のまばらな木立を透いて茜色が拡がっているのが見える。林の上の空に巻き上げるように雲が湧いている。
「うれしいな、神無月くんのお守りをするの」
 彼女はまぶしそうに私を見上げた。私は通りすがる一人の女を指差し、
「大きな胸だな。揉み心地がよさそうだ」
 とか、別の女の後ろ姿をじっと見て、
「尻が小さい。セックスアピール、ゼロだな」
 などと声高に下卑た批評をした。加藤雅江は頬を緊張させ、いちいち取ってつけたように笑った。
「神無月くん、ほんとに変わってまったね」
 この親切な女をますますからかってやりたくなった。
「アタマの中身のこと?」
「そうよ、気持ちのことよ」
「もちろん、気持ちはきのうと同じじゃない。この気持ちにきのうがあったことが不思議なくらいだ。気持ちだけじゃない。ほかのところも、きのうとちがってオトナになったんだぜ」
「いや!」
 先に立って歩きながら、私は背中で語りかけた。
「こう見えても……」
「やめて、いやらしい!」
「いやらしいもんか。この世でいちばん神聖なことだよ」
 駅舎が目の前にあった。不意に心が決まった。ふるえるような気がした。私は加藤雅江を振り返った。
「悪いけど、ここで帰ってくれないか」
 雅江はまじまじと私を見つめた。肩で切り揃えた髪が、ひどく素朴に見える。
「ええわよ。どうせ熱田駅まで送ってくれって言われたんやから。……でも、やっぱり改札口まで見送ろうかな」
「頼むから、帰ってくれ。寄らなくちゃいけないところがあるんだ。きょうしかチャンスがないんだよ。ぜったい迷惑はかけないから。……それから、このことは内緒にしてほしいんだ。雅江と見こんで、頼む」
「だれに会うかだけ、教えて」
「康男だよ。リハビリの日なんだ。会いにいって、びっくりさせてやりたい。ここんところ、学校であいつと口を利けなかったから。浅野に止められててさ」
「いいわ……」
 渋々加藤雅江はうなずいた。
「でも、約束して。遅くならないうちに、ちゃんと電車に乗るって」
「約束する。まちがいない。一時間、いや、二時間以内に、かならず浅野の家に帰る」
 加藤雅江はカバンを持ちかえ、美しい顔を二度三度うなずかせた。そして身を翻すと御陵の坂の麓へ引き返していった。私は数秒待ってから彼女のあとを追った。雅江は神宮前の商店街を上下に揺れながら東門のほうへ曲がっていった。伏見通りへ戻ったほうが近いのに、おかしなやつだ。神宮の境内を抜けていくつもりだろうか。
 ―かえって好都合だ。
 窒息しかかっていた肺にたちまち新鮮な空気が入ってきた。私は自分を生き埋めにしていた土くれをかき分けるように、御陵の坂を戻り、足早に神戸町目指して歩いていった。胸の鼓動が止まなかった。
 ―どうか、奇跡的にアパートにいてほしい。
 鶴田荘のある道の外れから、鉄階段の下でアパートの前通りに水を撒いている大柄な女の姿が見えた。鼓動が最高潮に達した。長い髪を揚げて丸め、頭の後ろに留めている。ゆったりとした茶のスカートに見覚えがあった。
 ―カズちゃんだ!
 踵の低いサンダル履きの豊満なからだが、入り陽を受けてきらきら輝く飛沫にうっとり見とれているようだった。私はあまりの幸運にうろたえ、思わず駆け足になった。胸の弾みに合わせてカバンの中身がゴトゴト鳴った。
「カズちゃん!」
 彼女はぼんやりした眼差しで振り向き、そこにあるはずのない私の笑顔に出会うと、ワッと手を上げてホースを取り落とした。
「どうしたの、キョウちゃん!」
「カズちゃんこそどうしたの? 飯場は?」
「きょうは生理で体調が悪かったから、お休みをもらったの」
「ああよかった、いてくれて。一か八かできてみたんだ」
 ホースからほとばしる水が、素足のかかとを洗っている。私は水を止めにいった。
「信じられない。きてくれたのね……。夢じゃないのね」
 カズちゃんはしっかり私を抱き締めた。乳房のふくらみが心地よく肋骨を押した。あたりかまわず口づけをする。彼女の顔が涙にまみれていた。唇を離して、しっかりと私を見つめる。
「こんなことして、危ないんじゃないの?」
 私は彼女の肩に手を置き、
「だいじょうぶ、浅野は白山の中学校に出張だって。一、二時間で引き返せばなんてことないよ。ごめんね、ぜんぜんあの家から出るチャンスがなかったから」
 カズちゃんは両手で涙を拭いながら、
「私こそキョウちゃんに会いにいかなくてごめんなさい。毎日、居ても立ってもいられなかったわ。でも、お母さんを刺激したらたいへんなことになるし、高校受験前の大事なときだし、とにかくキョウちゃんに迷惑かけたくなかったの。飯場に帰ってくるまで辛抱強く待とうって決めてた……」
「会いたかった、ほんとに」
「私も。毎日、息が詰まるくらい胸が苦しかった。たった一週間なのに、何年も経ったみたい。ほんとうにキョウちゃんは運が悪かったのね。……籠の鳥になってしまって」
「……そうだね。棺桶の中って、きっとこんな感じかもしれない」
「縁起の悪いこと言わないで。あのイヤな男、熱血先生を気取ってるわけね。でも、キョウちゃんにそんな仕打ちをするのは見当ちがいだわ。自分に恥じるような悪いことなんて何もしてないのに。こんな仕打ちをする人たち、いつか化けの皮が剥がれるわよ。ああ、キョウちゃん、うれしいわ。……コーヒー一杯くらいなら飲んでいけるわね。セックスはいまできないから、がまんしてね」
「もちろん! 会えただけで、もうじゅうぶんだ」
 二人で鉄階段を上りかけたとき、カズちゃんはふと、私の肩口から訝しげな視線を投げた。私はぎょっとして振り返った。意外なほど間近に加藤雅江が立っていた。上目づかいの泣き顔でふるえている。
「こういうことやったの……。商店街から振り返ったら、神無月くんが急いで信号を渡るとこやったから、追っかけてきたんよ」
「なんだよ、卑怯なやつだな、こそこそ跡をつけやがって。ちゃんと帰るから安心しろって言ったじゃないか」
 加藤雅江は激しくカバンを振って、私の腰を打った。
「嘘つき! 神無月くんの神経ってどうなっとるの。正直に言えばいいじゃない。私が信用できんの」
 彼女は健康なほうの脚に重心をかけて立ち、引きつった頬をカズちゃんに向けた。カズちゃんは輝くように笑った。雅江はそれに応えず、
「……やばいと思うよ。知ってる人に見られたらたいへんじゃない。それじゃ、私、ほんとに帰るから。遅くならんといてよ。これでも信用あるんやから。この時間に先生が帰っとって、何か訊かれたら、私に誘われてコーヒー飲んでたって言い訳すればええわ。話合わせとくから心配せんといて。……さよなら」
 私は、沈んでは伸び上がる気丈な背中を見送った。スカートが揺れながら、彼女の貧しいからだの線を追いかけた。私はいびつな動きを目で追うことで、募ってくる不安をまぎらそうとした。
「気の毒な子―」
 カズちゃんを見ると、その顔に偽りのない同情の色が浮かんでいた。
「私と同じ気持ちの子だわ。かわいそうに」
 カズちゃんは早口で話しだした。私がいますぐにでも帰らなければならない事情を知ったからだった。彼女は私の心にいつも響いてくるあのまじめな、明るい表情で話した。私は充血した目で彼女を見つめ、そうして何度もうなずいた。
「逃げ出したくなったら、かならず私を連れて逃げてね。愛し合ってさえいれば、人生なんてどうにかなるわ。でも、そう決めるまでは、ぎりぎりまでがんばって。野球選手になる夢だけは捨てちゃだめ。きょうから日記をつけてね。そして、最初の一冊を私にちょうだい。大将さんを大切にしてね。たった一人のお友だちなんだから。私の電話は××―××××よ、覚えた? ××―××××。急いで帰って。愛してるわ。ほんとうに、キョウちゃんだけを、死ぬほど愛してるの。さあ、急いで、急いで帰って。いっしょにいきたいけど、だれかに見られたらたいへんだから、ここで見送る」
 私は、さよなら、と小声で言った。唇を噛みしめながら、振り返り、振り返り、道の角に向かって歩いていった。
 ほとんど陽が落ちていた。坂下の十字路まで一息に歩き、東門のほうを見やった。早々と大戸を下ろした神宮前の商店街は、淡いネオンに照らされながら、殻を閉じた貝のように一列に並んで押し黙っていた。


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