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《ビーチボーイズ(1964)『ドント・ウォーリー・ベイビー』》
十五歳、十月、中学卒業を数ヶ月に控えて、素行の悪さから青森の祖父母のもとへ流された。
追うように送られてきた荷物の中に、使いこんだステレオと、それまで集めたレコードを詰めた段ボール箱があった。
音楽さえあれば、いつも私はどんな暗い心も吹き飛ばすことができた。
プレスリー、フォーシーズンズ、弘田三枝子、コニー・スティーブンス、岸洋子、ロイ・オービソン、カスケイズ。
何枚もかけていった。なぜか心が明るくならない。
耳に親しんだビーチボーイズのEP盤『アイ・ゲット・アラウンド』が出てきた。
B面の『ドント・ウォーリー・ベイビー』をかける。ドラムの鼓動が心臓に飛びかかって貼りつき、
ブライアン・ウィルソンのソフトなファルセットを主旋律に、凄絶と言っていいほどの美しい和音が部屋じゅうに立ち昇った。
一瞬のうちに透明なあきらめがやってきた。
この場所を与えられたのだ。この場所にしばらく腰を落ち着けよう。
心の底から再生の決意をした。私はひさしぶりに、ほとんど半年ぶりに、机に向かって本を読んだ。