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《カリフォルニア・ドールズ(1981) 監督ロバート・アルドリッチ 主演ピーター・フォーク》

 

 刑事コロンボこと、ピーター・フォークのA級作品。彼にはほかに『ベルリン天使の詩』というめぼしい作品があるが、前衛なので、私としては傑作と言いづらい。

 名作『何がジェーンに起こったか?』の監督R・アルドリッチは、男くさいアクションや異常心理の世界にこだわりながら作品を撮りつづけてきたが、この遺作で、女子プロレスの世界を生々しく、ユーモアたっぷりに描いた。小品に見えるけれども、人間的スケールの雄大な作品であり、涙の核にまで食いこんでくる。

カリフォルニア・ドールズというのは、女二人のタッグチーム名で、彼女たちのマネージャーがピーター・フォークである。この構図だけでも惹きつけられる。ダーティファイトを基調にするスポ根ものだが、じつに静謐なイメージの映画。バックにマネージャーの愛聴するオペラのアリアが終始流れつづける効果もあるか。

ハリー(P・フォーク 好演!)の運転する車で、三人は日銭を稼ぐために、タッグマッチの対戦相手を求めて西海岸をドサ回りする。求めるものはもちろん、生活と贅沢のための金だが、女二人がマネージャーに惚れているせいで、無機的なプラグマティズムが中心テーマでなくなる。彼女たちは、究極的には金のためではなく、惚れた男のために不如意な貧窮生活と激しいファイティングに耐えているのだ。そこがすばらしい。

いやはや、二人の女、アイリス(ヴィッキー・フレデリック)とモリー(ローレン・ランドン)が美しく、セクシーだ。思わずむしゃぶりつきたくなる。彼女たちに人間味がなければ、このリビドーは発動されない。だから、女子プロレス特有のファイティングの場面のツヤっぽさにリビドーを感じるわけではない。ハリーとのからみの場面にだ。彼女たちの表情や、からだから、ハリーに対する愛情が滲み出す場面にだ。

むろんタッグマッチの最終的勝利も、この活劇の推進力ではある。しかし、それはストーリー上最初から安堵していることであり、大して耳目を集めない。一人の男に二人の女がどこまで惚れこみ、いや、人間が人間にどこまで惚れこみ、人生の永遠の命運をともにしようと決意するか、その一点のみが関心事となる。その興味をこの映画は、静かな雰囲気の中でプラスの方向へしっかりと導いてくれる。永遠を願う決意の連続こそ、久遠の愛である。胸底に蓄えた涙がゆさゆさと揺すぶられるのも、その決意を見せつけられればこそである。