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《コニー・スティーブンス(1960) シックスティーン・リーズンズ》


 コニー・フランシスではない。ワーナー・ブラザーズ黎明期、初のアイドルスターだ。50年代末のテレビ『ハワイアン・アイ』の歌姫、クリケットと言えばご存知のかたもいるだろう。愛らしくもセクシーな歌声の持ち主。六十年代、牛巻坂のころの山高の髪型。金髪。157センチと小柄、少し痩せ型で、豊頬の美人ではない。

 私の手をとる仕草、笑っているときの目、理解があること、ひそかなため息、髪を梳かす仕草、ソバカスのある鼻、きみが気がかりだと言うときの様子、へんてこな服装、星に届くような夢、電話の囁き、キス、いつも胸をときめかせてくれること、すばらしい声、けっして離れないと言ってくれること。男の愛しさについて十五の理由をあげ、十六番目に「完璧」と締めくくる。二分まるまる恋する男のことを褒め上げる。ラブソング嫌いが聴いたら頭を掻き毟るかもしれない。もちろん私の好みの最上等の部類に属する。例のカンカンカンカンの鉦の音、オーケストラふうのヴァイオリンアレンジ。涙があふれてくる。

 当年八十歳という事実に当惑するが、小学五年生の感性をするどく揺すぶったという事実も考え合わせれば、その当惑もなつかしさの中へ消えていく。私も69歳なのだ。