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《くたばれ! ヤンキース(1958)》
監督 ジョージ・アボット スタンリー・ドーネン
主演 タブ・ハンター レイ・ウォルストン
野球への希望を人生の途上で断たれた私にとって、叶わぬ願いに夢の枕を濡らす恐ろしい映画である(私は小学校・中学校と五年連続で名古屋市のホームラン王だったが、母の猛反対によって中京商業からの誘いを断念しなければならなかった)。だから、この五十年で三、四回しか観ていない。
たとえ魂を売っても、あのころに戻れたら……と、テレビの野球中継を観ながら呟いた老人の願いを悪魔が聞き届ける。若返った彼はホームラン王になり、弱小チームを優勝に導く。しかし、老いた妻恋しさに、悪魔に懇願して現実世界へ戻してもらう。面白おかしく描いているが、私は胸を引き裂かれる。
私はいま、東大を優勝に導く小説を書いている。この映画にヒントを得たのではなく、野球の夢を断たれたころから書きたかった小説だ。才能ある生身の男の女性回帰小説なので、性描写も極致を窮める。五百野から書き起こし、才能豊かな野球バカを創造していく。この小説を書きながら、未完のまま、私は心おきなく死ぬだろう。愛と、友情、そこに野球が加わった道行き、それが私の人生だった。どこで途絶しても悔いはない。
なお、レイ・ウォルストンとロバート・デュバル(ゴッド・ファーザーの相談役、あるいはアラバマ物語のブー)とジュリー・アンドリュースは、発音のよいアメリカ人の三峰である。英会話を学びたい人の絶好の教材になる。