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《エルビス・プレスリー(1965) 『涙のチャペル』》

 

 今回からしばらく洋楽に戻る。『好きにならずいられない』と並ぶ、プレスリーの名曲中の名曲。これまた、野辺地の流謫中に聴いた。クマさんが送ってくれたEP盤の中にまぎれ込んでいた一枚だった。中学三年生の当時は、この曲が、教会で真摯に祈るよう人びとに促す宗教歌とは知らなかった。荘厳で、哀調を帯びていて、整然としていて、なるほど恋愛歌とは思わなかったが、何か個人的な苦悩や孤独を歌ったものだろうとは感じていた。宗教歌とわかったところで、メロディの卓越性についての印象も評価もまったく変わるものではなかった。この世に、賛美歌とは異質な、こんな美しい宗教歌が存在することにあらためて感動した。

 後年、この曲はアーチー・グレンという人物が、おそらくは1940年代に、息子ダレルのために書いたものだと知った。息子は53年にレコーディングした。65年にプレスリーがリリース、巷に知られるようになった。私が聴いたのはリリース直後であり、クマさんは発売と同時に購入して送ってくれたのだとわかった。胸が痛む。それらのEP盤の中に、アンナ・マリアの『ひみつ』も入っていた。この名曲については次回に書く。







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