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《さよならをもう一度(1961)》

監督 アナトール・リトヴァク   主演 アンソニー・パーキンス、イングリッド・バークマン


 アンソニー・パーキンスと言えば、『サイコ』。彼はすべての映画をあの鼻につく神経症的な雰囲気で通すが、この映画だけは嵌まった。バックグラウンドはブラームスの交響曲第三番。ドラマチックで悲痛な調べ。
年上の女に対する若い男の一途さ。焦燥する神経。女は妻ある男との五年越しの恋と二股をかけているくせに、青年に対してはいやに道徳家だ。彼でなくても苛立つ。唯一のネックは年齢。自己解放できない女の特徴だ。階段を駆け下りて去っていく男に、踊り場から身を乗り出して呼びかける女の最後の言葉は、
「私はお婆ちゃんなのよう!」
 私は、女のこの普遍的な思いを罵ったが、心の中で泣いた。老いは真の愛を退ける。自らの老いを許せないからだ。老いは死よりも残酷だ。死は称賛されるが、老いは称賛されない。