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《八月の濡れた砂(1971)》
監督 藤田敏八 出演 村野武範
八月の濡れた砂、か。題名に惹かれて友と映画館に入った。
八月の湘南海岸、か。これだけでつまらない映画だとわかった。高校を中退した男が、母校の校庭に現れる。サッカーボールが転がってくる。画面は変わり、レイプされた女が海岸でからだを洗っているのを、彼の友人が目撃する。秘部を洗うならまだしも、からだを洗ってどうする。風呂に入ってるんじゃないぞ。ここからは、ストーリー展開の必然性はいっさいなく、男女入り乱れてのレイプ合戦。同じ生殖機能を備えた人間として、そこまでセックスをしたいかと叫びたくなる。暴力団あり、車あり、猟銃あり、ヨットあり、なぜかコソドロあり、神父までありの、脈絡そっちのけの暴力シーンがつづく。帰りたいが隣の席の友に言い出せない。
「人のよさそうな村野武範に、暴力やセックスは似合わないな」
友が帰りがけに言った。似合うも似合わないもない。それ以前に脈絡がないのだ。ただ、石川セリの気だるい主題歌に聴き応えがあった。歌いたいとは思わなかった。
こういう映画もある。見ておくべきだ。駄作を見ることを一興としなければ、けっして傑作には突き当たれない。