kawatabungaku.com
川田文学.com 

《加山雄三(1963) 恋は紅いバラ》



 ハワイの若大将という映画で、ステージが停電になり、加山が飛び入りでフォークギターを抱えて歌ったこの曲が佳絶だ。
64年に、あの山口に教えてもらって歌った。山口がギターを弾きながら涙を流した。自然と涙が流れる不思議な声だと言われた。自分の声が天性の美声だと教えてくれた思い出の曲である。加山の若大将シリーズは中年になってから連続で観た。
学生時代の歌手のバイトでも、恋は赤いバラを何回か歌ったが、この曲にかぎらず、私が歌うとたいていの客は涙を流した。その声は、四十代から出なくなった。ビブラートでごまかせる演歌に切り換えて、二十年歌った。五十代までは拍手喝采されたが、このごろでは、声そのものが出なくなった。五十代の最後の声を聴かせたのは、早稲田予備校の上野さんと浜さんである。彼らは拍手するのを忘れ、心から感動してくれた。それ以降、人前で歌っていない。