《川田拓矢から読者へのメッセージ》

―青春は「立派」なものではないが、「尊い」ものである。その価値は計り知れない。夢幻(むげん)を追う体質の尊さを知る時期にそれを知るべく没頭してほしい―
 


 この表紙、とても気に入っている。じっと見つめていると、すがすがしいながら、物悲しいような気持ちにもなってくる。これは、空を表しているのか?それとも水を表しているのか。どちらにしても、一番好きな三十章に重なる。大きな光を慕っていくつかの光が向かって行っている。それを隔てているものは、川のような、雲のような、何かうねりのようなものだ。大きな光は南海を示し、小さな光たちは、堤や山中、松尾たち、由紀子を表すのか・・・。それとも大きな光は死を象徴した由紀子を表し、それに向かって、南海や堤たちが続くのか・・・。先生はよく生と死の一体を著すが、今回の作品は、地下(水中)と地上との一体感を見事に書いた。
 表紙の画像をいじっていたところ、偶然、反転された画像が映った。夕焼けのように美しいので、下に載せてみた(表紙デザインの五味さん、すみません)。すると目立たなかった小さな光たちが浮き立ち、一番目立っていた大きな光がほとんど見えなくなった。黒い影のようだ。そして、この黒い影が先生のいう「夢幻」という概念に重なる。目には見えない「夢幻」を追う、登場人物たち。明るい光の中で若い彼らは輝きながら進んでいくが、年を重ねながら、いずれ暗いうねりの中へ巻き込まれていき、そしてまた、いつか目指した「夢幻」を目指して泳いで行かなければならない。ふと、弱虫な自分への戒めの言葉が思い浮かんだ。―うねりを恐れるな!うねりに毒された不安は「夢幻」を巻き込み、飲みこんでしまう。



「陸奥湾の潮騒がしみついた作家・川田拓矢」
 ― 破綻にない緻密な文章。嫌味のない抑制のきいた表現と描写で崇高となっている ―
                      ペンクラブ監事・「北狄」編集長笹田隆志
光輝あまねき書評

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