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《都はるみ(1966) 白樺に涙あり》



 60年代初期に、うなり唱法で華々しく登場したド演歌歌手。デビューのころは、こまどり姉妹と並んで大嫌いだった。というより、『アンコ椿は恋の花』のうなり節に生理的に嫌悪感を覚え、長く拒絶した。『涙の連絡船』も、平凡なメロディとして耳の端に留めたくらいのものだった。
70年代の初期、ナイター中継が中止になり、そういうときの埋め合わせにテレビ局があらかじめ用意してあったスタジオ一人録りの『別涙(わかれ)』が流れた。因幡晃の元歌を彼女がカバーしたものだった。胸を殴りつけられた。演歌ではなかった。切々と歌い上げる魂の熱唱だった。コブシもウナリもなかった。
 LPを何枚か買ってきて、クズ曲の中に彼女最大の名曲『白樺に涙あり』を発見した。その後、耳をそばだてて彼女の曲を聴きつづけたが、1990年にポツンと『小樽運河』という佳曲を歌ったきり、私の関心から消えた。カバー曲をもっと歌えば、私の関心は持続しただろう。つまり私には、都はるみと言えば、この一曲しかない。