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《なぎさゆうこ(1972) 風の日のバラード》

 

 23歳。三鷹。名も知れぬ小さな飲み屋の、3曲百円のジュークボックスで聴いた。いたく気に入り、3曲ともこれをセットして聴いた。さまよう時代。ただ悲しいだけの無為の存在。この存在のまま生きようという15歳からの決意を、さまざまなエレジーが後押しした。

1966年に彗星のごとく現れた天才、筒美京平初期の名曲。淡い感傷を抱いて生きていることは、さわやかなことだと信じさせてくれる曲。題名のとおり、吹きぬける風を感じる。二度と訪れることのない青春の時間をいとおしむとき、さわやかすぎる残酷なメロディに聞こえることもある。

筒美京平の複雑な曲想はほとんどそれだ。ヒットしたという意味ではなく、メロディとリズムが高質なオーディオ装置に耐えるという意味で、主なところでは、さらば恋人、真夏の出来事、芽生え、風の日のバラード、男の子女の子、甘い生活、私鉄沿線、夜明けのMEW、とまどい小夜曲(セレナーデ)。二千数百曲の中から選んだ。