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《ナット・キング・コール(1962) 『ランブリング・ローズ』》
彼の歌は、『モナリザ』や『スターダスト』等、レイ・チャールズと同様、ガラガラ声のくせにしっぽりとした歌い方にくさみがあって好きではなかった。やがて『暑い夏をぶっとばせ』でようやく耳に馴染むようになり、『ランブリング・ローズ』でついに聴神経にピタリと嵌まった。これまでの彼の曲とはレベルのちがう大傑作だった。
それから数年して彼は肺癌で死んでしまったが、この名品はすぐに口笛で吹き出せるくらいの大切な形見として、私の脳裡に記憶された。その後、66年にスティービー・ワンダーが『太陽の当たる場所』を引っさげて登場するまでは、黒人歌手は関心の外だった。どうも私は、爆発的な歌唱法による複雑なメロディラインのバラードが好きらしい。シンプルで、しっぽりとテクニカルなものは苦手なのだ。