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《おかしなおかしな大泥棒(1973)》


監督 バッド・ヨーキン  出演 ライアン・オニール



 政府機関や保険会社の管理をするコンピューター会社を自発的に退社した青年が泥棒になる話。同じ搾取をするなら、持てる知恵を最大限に活かしながら、むだに富める人間から搾取したほうがマシだと考えたか。よくある話と思うだろうが、富裕階級に対するよほど強い論理立ったルサンチマンがないと、維持できない性向だ。必然的に正義性を帯びる。西岸良平の『謎の怪人蜃気郎』と同じ趣向である。

 とまあ、たぶんそういう理想を掲げたまではいいとして、理想の実現のための脈絡がじつにでたらめな映画で、人間関係の描写が浮き足立っていて、愛も、共感も、チェス泥棒の意味合いもすべて曖昧。西岸良平とちがって、《人間》と《技》のツキツメがない。

 だから内容は語らない。語れない。それでもこの映画は印象に残る。ライアン・オニールのかもし出す清潔感とユーモアの故である。ストーリー以前にその個人を見つめさせる映画俳優は、洋の東西を問わずマレだ。そういう俳優の出演する映画は、内容そっちのけで印象に残る。頑固俳優石橋蓮司の『出張』、ネアカ女優ホーン・ユキ(ちょい役)の『青春・PARTU』が好例だ。