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《布施明(1966) おもいで》

 

 青森高校から名古屋西高へ転校した年、学校帰りの商店街から聞こえてきた。当時の日本の街には、商店街の電信柱には数十メートルおきにスピーカーが取り付けてあった。洋、邦ともにメロディが奇跡的に美しい曲の全盛時代だったせいもあるだろう。思わず立ち止まって聞き惚れるということができた。音源をどこから流しているのかわからなかった。有線ではないことは確かだった。好事家がスタジオかどこかで、個人的な趣味でレコードをかけているのにちがいないと思った。
 私は立ち止まった。ふるえた。涙が流れてきた。曲折してたどりついた名古屋西高時代が、この歌一色に染められた。布施明の名歌は、平尾昌晃作曲のこの歌ひとつで終わった。彼はその後数々の駄曲で世に受け入れられた。初々しい情熱歌はこれ一曲である。