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《パーティ(1968)》

 監督 ブレイク・エドワーズ  出演 ピーター・セラーズ 


 抱腹絶倒。文字どおり腹を抱え、地面に倒れ伏すおもしろさ。彼が出るから傑作になるという男優がときどきいるが、まさにピーター・セラーズはその一人。代表作とされるピンク・パンサーはその演技のわざとらしさに腹を抱えられないので、コメントを割愛する。

 彼がタモリのような、飄々としてシリアスな風味を醸し出すとき、その鬼才が発揮され、出演作を高みへ押し上げる。「博士の異常な愛情」「チャンス」など重金のシリアス物の並ぶ陳列棚の片隅で、「パーティ」というコメディが小粒なダイヤモンドの清華を放っている。

 さっぱり売れない俳優志望のインド人、バクシは、招待主の手違いから映画関係者のパーティに招待される。そこで彼が巻き起こす騒動。ひとことで言えばそれだけなのだが、ピーター・セラーズの、科白ではなく行動で笑わせる熟達した芸は先天的なもので、鍛え上げたものではない。安心して、彼といっしょに、パーティ会場の権威を笑い飛ばすことができる。

 70年代の後半にテアトル池袋で観た。笑いっぱなしだった。それをきっかけに、ぽちぽち彼の映画をぜんぶ観ていった。一本を、と言われれば迷う。上記の三本だろう。パーティ会場の一シーンで、孤独にダンスを踊っていたミニスカートの女の絶妙な動きが忘れられない。