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《瀬川瑛子(2002) 『東京はぐれ鳥』》

 奇跡の歌声の持ち主瀬川瑛子の最高傑作。
彼女がさりげなく歌う唯一の曲。
最初から最後まで肌が粟立ちっぱなし。

何度も言うようだが、歌は歌詞を聴かない。声質とメロディのみ。
歌詞重視が現今のラップを生み、メロディのないリフレインを囁くか叫ぶだけの愚にもつかないニューミュージックを生んだ。

サザンの桑田はメロディを創り上げてから、でたらめに歌詞をふると聞いた。
吉田拓郎は歌詞を創ってから、怠惰なメロディのリフレインをふる。
どちらがすぐれた歌かは、だれの耳にも明らかだろう。合体の奇跡というものもあるが、きわめてマレだ。

平凡な声質と無能なメロディのものしか売れないという音楽シーンは、いつの日か打破されるのだろうか。
これに類する文化状況は文章芸術の分野にも侵出してひさしい。

余儀なく過去の価値を探ってなつかしむのではなく、リアルタイムがもっと豊かである晩年を送りたかった。