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《舟木一夫(1965) 成人のブルース》

映画『東京は恋する』のエピローグ歌。舟木一夫の最高傑作。映画ではエンディング付近で一番しか唄わなかったが、その後二十年余り耳に残っていた。
八十年代にVHSでこの映画を手に入れ、なつかしい気分で学生たちといっしょに観た。やはり一番しか流れないこの歌だけに耳が留まった。
64年末に舟木は成人になった。それを記念して作られた新成人讃歌。成人と名のつく唯一の曲。讃歌であるはずが、哀歌のように舟木は歌う。そういう声なのだ。ブルース―憂愁。憂愁は人を共同体から切り離し、個=孤の内面に沈潜させる。声にそういう素質を持っている歌手は、大衆性をなかなか獲得しがたいが、普遍的な芸術性は手中にできる。彼はいまなお歌い継がれる歌手になった。