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《ティミー・ユーロ(1962) 『涙が頬をぬらす時』》
中学二年の秋、私をシャウト唱法に目覚めさせた最初の曲。高崎一郎がディスクジョッキーをする『ザ・ヒットパレード』で聴いた。この番組は60年代の音楽のシュトルム・ウント・ドラング(疾風怒濤)をこれでもかと巻き上げた名曲の宝庫だった。
同じころ、クマさんと喫茶店でアップルパイを食べていたとき、店主がかけたレコードがジョー・スタッフォードの『霧のロンドンブリッジ』だったが、知恵者のクマさんに1956年のものと教えられ、もっとむかしにシャウト唱法があったのかとびっくりした。ただ、ジョー・スタッフォードのシャウトはその一曲だけだった。ティミー・ユーロはアナ・ガブリエルと同様、シャウトするように喉ができているようで、『ハート』といったシッポリした失恋の曲も、囁いて歌いながらも、度肝を抜くようなシャウト唱法なのである。
その後シャウト唱法はジャニス・ジョプリンで極点に達したが、メロディアスなものはティミー・ユーロにとどめを刺す。日本では弘田三枝子や、若いころの和田アキ子、中村あゆみ、葛城ユキなどがいるけれども、どことなく線が細く、ストレートに胸をどやす迫力という点ではとうてい比較にならない。ちなみにティミー・ユーロは、中二のころから現在まで五十年余り、リアルタイムで頻繁に聴く歌手の筆頭である。おそらくその先天的な声質のせいか、1904年に(64歳)咽頭癌で亡くなったと何かで読んだ。悲しきかな。