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《夢のチョコレート工場(1971) 監督メル・スチュアート 主演ジーン・ワイルダー》
傑作中の傑作。私たちのあいだでは『夢チョコ』。2005年の駄作のほうではない。日本では未公開だったので、これまたビデオ屋めぐりで発見した。
家計を助けて働く新聞配達少年チャーリー(ピーター・オストラム)。彼は飴一つ、チョコレート一枚も買えないくらい貧しいのだ。給料日のきょうもキャンディ屋を羨ましそうに覗いている。家には父方母方の寝たきり老人夫婦が二組、洗濯女の母親が一人、彼の給料を待っている。滑稽なほど凄い設定だ。チャーリーはこの悲惨さにもいっさいめげない、天使のような少年だ。でも、お菓子は食べたいにきまっている。
この町には、世界一のワンカ・チョコレート工場がある。母方のお爺さん(ジャック・アルバートソン)の話によると、工場主のウィリー・ワンカ(ジーン・ワイルダー。私の好きな五本指に入る俳優)はあまりにもおいしいお菓子を作ったために、ライバルたちにいろいろ過激な探りを入れられ、それに倦(うん)じて姿を消してしまっていたが、それから三年後に、さらに高度な製法をひっさげて工場を再開したとのこと。だれが働いているのかいっさいわからない謎の工場だ……。 そのワンカ氏が、新製品のワンカチョコレートに5枚だけ招待券を入れ、当選した子供をワンカ工場に招待して製法の秘密を開陳すると発表した。
ここから先は? 今回だけはプロットを語るのをよそう。工場内の息をつかせないストーリー展開は、実際にこの映画を観て体験するしかないからだ。結論だけはしゃべってもいいだろう。チャーリーを含めた5人の子供たちは、ライバル会社の怖いおじさん(この男の正体もしゃべらないでおこう)に吹きこまれて、ワンカ製品を盗むスパイ活動を命じられていたが、チャーリーだけは最期にその盗んだお菓子をワンカに差し出す。ほかの4人の子供たちはすでに、ウンパ・ルンパの手で抹殺されていた(この冗談交じりの殺人は圧巻―ほんとうは連れ去られただけで殺されていないのかもしれないけれど)。ワンカは正直なチャーリーに何と言ったか。
「ひどい世の中に、このやさしい心。きみは勝者だ」
と言ったのだ。このあとの意外なキメは、実際の鑑賞でとくとご覧あれ!