三十四

 夕食がほとんど終わりかけ、ビールに切り替わる。キッコが帰ってきた。私は、
「遅いね。夏休みじゃないの」
「土日は三時から七時まで英数国の補習。今月いっぱい。お帰りなさい。観とったで。着々とホームランを打ってるなァ。いったい何本いくんやろう」
「急にスランプにならなければ、百三十本くらいかな。打てるだけ打つよ」
キッコといっしょに賄いたちが食卓についた。私は主人と女将に、
「あしたは夕方に水原監督たちがきます。よろしくお願いします」
 グラスを含む私の下あごを直人がいじる。主人が、
「また写真屋を入れて、でき上がった写真をこの座敷に飾りましょう」
 女将が、
「小山オーナーもくるんよね」
「はい、村迫球団代表も、足木マネージャーもきます。榊スカウト部長は甲子園に出かけているんじゃないかな。いや、法元さんがいってるかも。それなら榊さんもきます。あとは江藤さん、中さん、高木さん、一枝さん、菱川さん、小川さん、小野さん、太田、星野秀孝といったところかな。土屋さんと水谷則博もくるかもしれない。五時過ぎだと思うので、誕生会の前に、大幸球場に二軍戦を観にいってきます」
 菅野が、
「矢田ですか。タクシーに乗ってたころに、ときどき大幸球場で暇つぶしをしたことがあったなあ。日曜だからやってるでしょう。ちょっと遠いので車でいきましょう。二軍戦は一時試合開始です。三時半には終わりますよ。途中で飽きちゃうかもしれないし」
「ワシもいく。ソテツ、弁当頼む。氷水を入れた水筒三本な」
「はい。イネちゃんといっしょにいっていいですか」
「ええぞ。和子、今月からアイリスは日曜祭日が休みになったんやろ。それに拡張工事が終わるまで休みやし。いっしょにいくか?」
「あさってアヤメの開店だから、準備で立てこんでるのよ。百江さんとキッコちゃん、それから天童さんと丸さんはいけないわね。ソテツちゃんたちといっしょにメイ子ちゃんもいってきたら」
「はい!」
「直人は私がちゃんと迎えにいってくるから。五時までには帰ってきてね。直人、もう遅いわよ。おねむ」
「はーい」
「幣原さん、今夜は直人をお願いね」
「はい、わかりました」
「ソテツとねる!」
「はいはい、そうしましょうね。お風呂入って歯を磨いてからよ」
 幣原が直人を風呂に連れていった。八時を回っている。キッコが食事を終え、
「復習、復習」
 と言いながら二階へ上がった。トルコ嬢たちがテレビを観ている。彼女たちの横顔を見つめながらビールを飲む。コント55号の世界は笑う。女たちがおもしろそうでないので菅野がチャンネルを回す。東海テレビで後楽園の巨人―広島戦をやっている。回す。CBCテレビはなぜか南海―近鉄戦を放送している。ひさしぶりにパリーグのテレビ中継を観ることにした。大阪日生球場。外野スタンドが異常に狭く、左右のポールから右中間、左中間までは、二十メートルほどの場外防御ネットが張ってある。スコアボードの両脇は無防備だ。客の入りはガラガラ。内野スタンドはかなり広いが、やはりガラガラ。太鼓の音が聞こえる。試合は中盤の五回で、南海が七対一で勝っている。アナウンサーが、
「鈴木が野村に十六号を打たれて二回六失点で降板、板東も島野に五号を打たれ一失点で降板、いまは水谷が懸命に火消しに努めていますが、すでに二失点……」
 云々と落ち着いた声で放送している。中日にいる板東や水谷と同姓だが、もちろん別人だ。南海はあの杉浦が投げていて、六回まで二失点で降板した。どこか彼のプレイに熱がない。村上がリリーフに立った。菅野が、
「杉浦は今年初勝利でしょう。一勝五敗。痛々しいですね」
 九時で容赦なく中継が打ち切られた。回す。土曜映画劇場。黄金の七人。食事を終えたソテツがコーヒーを男三人に持ってくる。幣原が風呂から上がった直人を連れてきた。
「おとうちゃん、おやすみなちゃい、みなちゃん、おやすみなちゃい」
「おお、お休み。きょうは夜更かしだったな。あしたからまた早く寝るんだよ」
「はい」
 ソテツが、
「じゃ私、直ちゃんを寝かせてきます」
 主人が、
「おまえもそのまま寝てまえ。いつもそうやろ」
「はい。じゃ、遠慮なく。お休みなさい」
「お休み」
 カズちゃんとイネが座のみんなにコーヒーをいれて持ってくる。女将がカンナのポラロイド写真を水屋の抽斗から何枚か持ってきて見せる。八日に見たときよりは、顔の赤みが抜け、白いカスも取れて、見られる顔になっている。トモヨさん、助産婦、節子やキクエたちも笑顔で写っている。女将は思い出したように離れに立っていき、青いビロードの表紙のアルバムを持って戻ってきた。カズちゃんのセピア色の赤ん坊写真が何枚か貼ってある。私の前で初めて開くアルバムだ。
「カンナにそっくりですね」
「トモヨが和子と瓜二つやからこうなるわな」
 みんなで覗きこむ。かわいい! お人形さんみたい。カンナちゃんも負けてないわ。直人くんに似てないわね。直人くんは神無月さん似よ。
 賄いたちが後片づけに立った。カズちゃんが、
「あしたはお客さんで塙さんや、森さん、島さんもくるから、四十人くらいかしら。食材は足りるとして、賄いは応援にきてもらわないとだめね」
 百江が、
「ケーキは直径七十センチのものを注文してあります。踊りと三味線を呼ぶのは八時過ぎです。直ちゃんが寝てる時間なのでちょうどいいでしょう」
 主人が、
「写真屋を入れるのは九時でええな。プレゼントはいつものようにステージ部屋に積んでもらおまい」
 私は、
「あしたの二軍戦の帰りにプレゼントを買ってこよう。何にしようかな」
 菅野が、
「少し長めのプラスチックのバットと、小さなゴムボールですね。ちゃんとした子供用のグローブも」
 女将が主人に、
「直人の靴もお願いするわ。十三センチ。かわいらしいのをな」
「おお」
 賄い連がすっかり厨房に入ってしまうと、女将が離れへ去り、天童や丸といっしょにトルコ嬢たちも二階へ上がった。ソテツが直人を寝かせつけて戻ってきた。睦子に、
「きょうはイネちゃんといっしょに寝たらどうですか」
「いえ、きょうは帰って、あした夕方にきます」
 イネが厨房から、
「泊まってったらいがべ」
「少し調べものがあるので、きょうは帰ります」
「ほう? じゃあした待っとるすけ」
「はい、お休みなさい。ごちそうさまでした」
 厨房全員でお休みなさいを言う。カズちゃんと門まで睦子を送っていく。カズちゃんが、
「調べものって、万葉の?」
「はい。夏期に万葉古代学のゼミを受けようと思って、その志望書に一首、歌の解釈をつけて出さなくちゃいけないので、それをちょっと」
「そう、がんばってね。真剣に生きてるムッちゃん、大好きよ」
「ぼくも。睦子を見てると背骨がピンとする」
「郷さんを見習ってるだけです。もっともっとがんばらないと。郷さん、くれぐれもデッドボールに気をつけてくださいね」
「うん、気をつける」
「じゃ、さよなら」
 自転車に乗った睦子に二人で手を振った。玄関に戻りながら、
「今夜あたりそろそろ文江さんのところにいってあげたらどう? ゆっくり泊まってきたらいいわ」
「うん、そうする。書き物してないかな」
 カズちゃんは微笑しながらうなずき、
「してても障りはないわよ。十時半を回ったし、そろそろお休みするところでしょう。とつぜんこられるのも、うれしいものよ」
 居間で主人とコーヒーを飲んでいた菅野が、
「最後の見回りいきましょうか」
「おお。きょうとあしたは遅なるな。和子、おまえセドリック乗ったらどうや。維持費出したるで」
「六人乗りだから、中日球場にいくときに菅野さんが使うのがいちばんいいと思うわ。それよりガレージを広くするほうが先よ。キョウちゃんはこれからどんどん車もらってきちゃうわよ。そのときは、太田さんや菱川さんたちにあげたらどうかしら。ね、キョウちゃん」
「前から考えてた。いずれそうなると思う。ガレージはいまのままでいい。博覧会じゃないんだから」
 菅野は、
「セドリックで則武まで送っていきます。そのあとで私たちは店のほうへ回ります」
 厨房にお休みを言って椿町組四人玄関を出た。菅野は紺色のセドリックの助手席に主人と百江を乗せ、後部席にカズちゃんとメイ子と私を乗せた。フューフューというエンジンのすばらしい始動音。主人が、
「ええ音やな。さすが6気筒。シートベルトもついとるんやの」
 牧野公園を過ぎ、笈瀬川筋に出る。
「いいわね、この車。マークⅡより走行が軽いわ」
「ですね。やっぱり私がしばらく使わせてもらおうかな」
 主人が、
「そうせえ。税金もガソリン代も車検も全部払ったるで」
「はい、ありがとうございます。ガソリン代は自分で払います。お嬢さん、マークⅡ、ちゃんと乗らないとだめですよ。機械は動かすことが肝心です」
「うん。なかなかチャンスがないのよね」
「二店舗が落ち着いたら、ときどき暇ができますよ。せいぜいみんなを乗せてドライブしてください」
 百江が、
「私、アヤメの開店、とても緊張してるんです。責任者なんて……レジもできませんし」
「だいじょうぶよ。スーパーのレジをやってた人にしてもらうことになってるから。百江さんはレジカウンターに立って、いらっしゃいませ、ありがとうございましたって言ってればいいの。ときどきホールを手伝ったりしてれば気がラクでしょ。自由にやって。百江さんの貫禄が大事なんだから。二、三日やってどうしても肌に合わないようだったら、またアイリスの厨房に戻ってくればいいわ」
「はい……。やる以上は、まかされた気分で、弱音を吐かずにちゃんとやります。あ、私はここで。じゃ、あしたはゆっくり休ませていただきます。あさってのアヤメは早番ですから、六時にお店に入って待機してます」
「料理人さんが五時くらいから動いてるから、安心してちょうだい。ホールの人たちは六時半に入ります」
 百江を降ろし、私たち三人をカメダ珈琲の前で降ろしてセドリックが去っていった。
「ほんとに、キョウちゃんの女はみんなまじめなんだから。じゃ、キョウちゃん、いってらっしゃい」
「うん」
 カズちゃんとメイ子にキスをして滝沢塾に向かった。
 文江さんは居間でラジオを流しながら、生徒の手習いに朱を入れていた。文江さんは跳びあがって喜び、さっそく私を風呂場へ連れていき、着物の裾をまくって尻を向けた。文江さんは何の心構えも、からだの準備もしてなかったので、思わず失禁した。失禁しながら素足を濡らして何度も達しつづけた。いつにない激しいうねりの中へ私は銃を弾くように射精した。浴槽の縁をつかんで尻跳ねする文江さんの下半身を曝したまま居間に抱いていって固い帯も解いた。座布団の枕を頭に敷き、裸に剥いて仰向けにして、ティシュで股間の精液を拭う。いつまでも愛液が飛び出してくる。腹をさすり、尻をさすっても尻跳ねはなかなか止まなかった。禁欲状態が長かったからだと同情した。
「ごめんね、長いこと放っておいて」
「ええの、ええの、気持ちようしてもらってありがと。死ぬほど愛しとるよ」
 もう一度自然に挿入して、乳首を吸った。しばらくアクメの余波で動いていた膣が、別の動きに変わった。
「あ、いい、キョウちゃん、あああ、またイッてまう! イク!」
 文江さんの心地よい悶えが静まるのをおとなしく待った。その格好で私のものが萎むまで、会話で気を散らす。文江さんの穏やかな表情と関係のない股間の生きものは私の萎みかけているものを間歇的に何度も締めつけてくる。
「もうすぐ終わるよ、キョウちゃん、もうすぐやから待っとって」
 最後に二度ほど両脚を伸展して強直させた。
「終わった?」
「うん、終わった、ありがとう」
「あしたの直人の誕生日のお祝い、一週間早いけど、くる?」
「寄せてもらう。ゴムのお馬の乗り物と、ミニカーを買ってあるんよ」
 私のものは急速に縮んで、生きものの唇に引っかかった亀頭を引き抜くだけで離れることができた。文江さんはブルッと名残の痙攣をした。
「きのう日赤にいって、カンナちゃんに会ってきた。すごい美人やわ。トモヨさんと和子さんを足したぐらいきれいになるんやないかな」
 文江さんは私を仰向かせて、萎んだ性器をやさしく含んだ。時間をかけて清潔にする。
「産後って、どれくらいで退院できるものなの」
「トモヨさんのあの様子なら、三、四日もあればじゅうぶんやと思うわ。でも、赤ちゃんといっしょに退院するには、自分の体力をしっかり取り戻してからやないと。お乳をあげたり、オシメ替えたりで、目が回るようになるから。一週間くらいは入院しとるかもしれんね。退院してすぐセックスしたらあかんよ。節子が言うには、子宮が回復するのにひと月以上かかるらしいから、どんなにしてって言われてもせんようにせんと」
「わかった」
「お風呂入れるわ。そのあとで焼きソバ作ってあげる」


        三十五

 翌朝の七時に、文江さんの心尽くしの朝めしを食って、則武に戻った。カズちゃんとメイ子が食卓を整えているところだった。
「食べてきたから、オッケー」
「きょうも三十度以上になるわよ」
「菅野さんにランニング中止の電話をかけといて。おたがい熱射病になったらまずい。一時間ほどジムにこもる」
「私たちは、きょうは一日業者さんの立合いで、アヤメの食器の確認と厨房の点検。一枚だけキョウちゃんの写真、奥の隅の壁に飾ったわ。ふだん人目につかないところ。あとはお品書きだけ」
「レギュラーのサインもらってこようか」
「それはいいわ。ゆっくりものを食べる店内が息苦しくなっちゃう」
「お仕着せは?」
「大衆食堂だもの。厨房の白衣以外は、それぞれ自由で清潔な格好をするだけ。三角巾だけはかぶることにしてる」
 休み休み一時間ほどジムで鍛錬。机部屋にいく。十七日に渡す分はカズちゃんに預けてあるので、二週目から八週目の七回分の誤字脱字をザッと確認する。あしたから一週間かけて最終部までしっかり確認し、それも十七日にいっぺんに渡すことにした。
 北村席で昼めしを天ぷらそばで軽めにすまし、ぴったり十二時、菅野運転のセドリックで大幸球場へ出発。主人、ソテツ、イネ、メイ子、私、菅野の六人。太閤通から桜通へ出てひたすら直進し、久屋大通を過ぎ、高岳のあたりを左折。
「中村区、中区、東区ときました。この先の赤塚を右折したら、あの徳川園です」
「ああ、旭丘高校」
「はい。その先に名市大があります。大幸球場はそのそばです」
 三十分ほどで到着した。雑草の生えているだだっ広い駐車場にセドリックを停め、全員用意してきた麦藁帽子をかぶって降りる。ソテツとイネは弁当を抱えた。球場らしき平たい建物に近づいていく。切符売場がなく、ただゲートが開いている。入りこむと《ネット裏五十円・内野席二十円》と時代を取りちがえたような値段表が壁に貼ってあり、映画館の穴場のようなものがあった。六人分のネット裏の切符を買う。切符係の老女の糸切り歯が一本欠けていた。
 たまたま巨人戦だったので、六分の入りだ。それでも五百人はいない。両翼八十五メートルくらいか。幅の狭い立ちバックネットの後部と三塁ベースあたりまでの内野席に、古びた観戦ベンチが何列か渡してあった。外野は天然芝だ。外野席はなく、ライトからセンターのフェンス沿いに立てた二十メートルほどのネットの向こうが住宅街になっている。ネットのないレフトからセンターの後方は疎らな立木が並んでいた。
「こりゃいいや。のんびりできる」
「でしょ? 最高の息抜き場所です。ときどきライトのネットを越えて場外にいっちゃうんで、民家の屋根に当たるんです。場外と言っても百メートルちょっとでしょ。新人の広野やベテランの法元なんかがよく叩き出してましたね。本多コーチがよく、ライトへ打つなって怒鳴ってましたよ。割れた瓦は球団の弁償です。瓦は高いんですよ」
 ネット裏の好きな席に坐る。物売りはいない。主人が、
「ワシも六、七年前、愛知大学リーグを一度観にきたことがある。中京大の木俣が話題になっとったころや」
 菅野が、
「木俣は慶應を受験して落ちてるんです。それで中京大に引っ張られた。落としてもらってよかった。慶應にいってたら、いまの木俣はなかったですよ」
 人生はちょっとしたことで変わるけれども、ちょっとした幸運と努力ではもとに戻せない。情熱が必要だ。
「甘い考え方かもしれませんが、どう転んでも木俣さんはドラゴンズにきたでしょうね。ドラゴンズに誘われてすぐ中退したくらいですから、情熱がちがいます。……グランドがきれいですね。クレー舗装の内野と天然芝の外野か。目にいい」
 青空。強い陽射し。主人と菅野は深々と煙草を吸った。試合開始十五分前。スターティングメンバーのアナウンスが流れる。初々しい少女のような声だ。
「みなさま、本日は大幸球場にご来場いただきましてまことにありがとうございます。本日の試合は、読売ジャイアンツ対中日ドラゴンズのイースタン・ウェスタン交流戦でございます」
「二軍は公式戦がないの」
 菅野が、
「二軍公式戦は対戦数がいびつになる試合が多いんですよ。年間六十試合ぐらいしかしないし、固定メンバーがいないので、それほど選手にとって過酷なわけじゃありません。それでこんなふうに交流戦を挟むわけです」
 アナウンスがつづく。
「両チームの先発メンバーとアンパイアをお知らせいたします。先攻の読売ジャイアンツ、一番センター才所、背番号44、福岡県、二番セカンド山下、背番号31、高知県」
「変わってるなあ!」
「ですな」
 観客はざわつかない。通いつめている証拠だ。 
「三番レフト柳田、背番号62、熊本県、四番ショート上田、背番号57、兵庫県、五番ライト林、背番号37、神奈川県、六番ファースト大隈(おおすみ)、背番号66、静岡県、七番サード真鍋、背番号48、山口県、八番キャッチャー杉山、背番号49、千葉県、九番ピッチャー宇佐美、背番号47、愛媛県」
「全国から集っているという宣伝だね」
「つづきまして後攻の中日ドラゴンズ、一番ショート村上、背番号51、愛媛県、二番セカンド日野、背番号6、長野県」
 お、ここにいたのか。
「三番センター伊熊、背番号25、愛知県、四番ファースト千原、背番号43、東京都」
「千原さんは一軍でも四本打ってるから、当然四番だよなあ」
「五番レフト佐々木、背番号48、広島県、六番キャッチャー神原(かんばら)、背番号50、広島県」
 主人が、
「神原は西鉄からきて二年目だがね。もう三十越えてるやろ」
「七番サード竹内、背番号55、石川県、八番ライト新谷、背番号36、和歌山県、九番ピッチャー竹田、背番号46、兵庫県。球審は……」
 睦子が、
「竹田って、このあいだのドラフト―」
「うん、六位だね。兵庫の育英高校」
 イネが、
「おがしな投げ方だでば」
 手足をバタバタさせる投球フォームを眺めながら、たしか入団式の日にスタミナがないと言われた男だったことを思い出した。穴場からもらってきたパンフレットを広げる。竹田和史、左の速球派、夏の甲子園で連続十一三振とある。甲子園組か。五十点選手ではどんな記録も特筆すべきものにならない。ソテツがポットから紙コップにアイスコーヒーを注いでみんなに配る。
 布を引き裂くようなプレイボールの声。耳に障る。
 一番、巨人の才所がバッターボックスに入る。パンフレットを見ながらの観戦になる。才所俊郎、右投右打、百七十八センチ、八十一キロ、二十七歳。昭和三十三年、夏の甲子園に補欠で出場。板東英二が投げた徳島商業に敗退。日鉄二瀬から河合楽器を経て、昭和四十年ドラ五。肩を上下にクンクン揺するむだな動き。竹田初球バタバタ、外角へ無意味に遠いストレート、百三十五、六キロ、ボール。二球目バタバタ、外郭ぎりぎりのストレート、ストライク。三球目同じコースと球種、ストライク。なぜ手を出さない? 四球目内角カーブ、ワンバウンド、ツーツー。あんなボールを上体が打ちにいっている。五球目真ん中高目のボール球に手を出してセカンドゴロ。ひどい。
「こりゃ、ひどい」
 二番山下司、右投右打、百七十六センチ、七十二キロ、二十一歳。甲子園出場なし。昭和四十一年ドラ一。ボックス内でちょこまかした動き。ワンスリーから無意味なフォアボール。これもひどい。
「いやあ……」
 男二人も同じようにため息をつく。三番、柳田俊郎、左投左打、百七十六センチ、八十キロ、二十一歳。甲子園出場なし。四十二年ドラ二で西鉄ライオンズに入団。去年田中久寿男との交換トレードで巨人に移籍。少しバットを寝かせた落ち着いた構え。
「西鉄から今年きたやつです。毒蝮三太夫にそっくりでしょ」
「ほんとだ」
「あだ名はマムシです」
 初球の外角高目を強振してサードフライ。いいスイングをしていた。もう少しボールの上を食えばホームランだった。チェンジ。主人に、
「この人は、すぐ一軍ですね」
「そうですか、憶えておきます」
 巨人のピッチャーはでかい宇佐美敏晴、右腕の本格派、右投右打、百八十三センチ、七十六キロ、二十二歳。甲子園組。四十年ドラ六。球速は百四十二、三キロ。打ちごろ。ドラゴンズのホームランをたくさん見られそうだ。
 ドラゴンズの攻撃。一番、村上真二、右投右打、百七十六センチ、六十六キロ、痩せすぎだ。二十歳。おととしの甲子園準々決勝敗退、高校球界ナンバーワンショートの定評。マスコミの命名は当てにならない。無視したほうがいい。ドラ四。入団式で会ったが顔を忘れた。前屈みになりバットを寝かせて構える。初球真ん中のドロップ、ワンバウンド。二球目内角打ちごろのストレート、ファール。はあ? どうしてファールになるんだ。三球目外角打ちごろのストレート、一塁スタンドへファール。
「どうしたんだろう……」
 男二人は黙っている。女たちはキョロキョロ周囲の景色を楽しそうにを見回している。四球目、外角の絶好球、ファーストライナー。球が上に上がらない。三回まで見物はもたないな。
 二番、日野茂、右投右打、百七十一センチ、六十八キロ、二十四歳。中央大から松下電器を経て、四十三年ドラフト外で中日入団。何カ月か前打撃練習で見かぎった男だ。二軍では活躍しているのだろう。初球、外角いっぱい、ストライク。だめだろう。見逃し方に緊張感がない。二球目外角高目ストレート、チョンとバットを出してライトファールフライ。なんでチョンと打つの? ときどき一軍に上がってこれるのは、あの政治性のせいか。 
 三番、伊熊博一、左投左打、百八十一センチ、七十五キロ、二十一歳。中商二年生のときに甲子園。三年生の昭和四十一年、左の四番バッターとして春夏連覇。水谷則博の先輩ということか。四十二年のドラ一。とにかく甲子園組がゴロゴロいる。腹の前でグリップをゆらゆら。どいつもこいつも余計な動きをしながらボールを待つのが解せない。じっとしとれ! 初球内角ストレート、大きく切れるファール。
「え? ファール?」
 二球目外角カーブ、ストライクに見えたがボールの判定。一球、得した。三球目、ど真ん中のストレート、ハッシと打つ。よし、いったか! ライトポールをはるかに切れるファール。
「え? ええ! なんであそこに飛ぶの?」
 三球目、真ん中低目のカーブ、チョンと合わせてセカンドゴロ。見ていられない。これではたしかにクビだ。
「ホームラン、パカスカと思ったけど、これはひどい。三回ぐらい観たら帰りましょう」
「ほうやね、一軍とは雲泥の差や。ワシもここまでとは思わんかった」
 ソテツが弁当を配る。みんな明るい声を上げて薄い箱を開ける。中村公園の花見のときのようなごちそうだ。箸を動かしながら、二回の表の観戦。
 巨人の攻撃。四番上田武司、右投右打、百八十三センチ、七十七キロ、二十三歳。兵庫鳴尾高校のエース。甲子園には不出場。ドラフト初年度直前の三十九年に巨人入団。翌年野手に転向。おととしイースタンの首位打者。黒江や土井の後継者と目されている。二割ぎりぎりの打者、ホームランはほとんどない。四番の意味が不明だ。バットを顔の前でフラフラ。こいつもか。初球、内角低目ストレート、ボール。二球目外角ストレート、バックネットオーバーのファール。女たちが悲鳴を上げて肩を寄せ合う。三球目、ど真ん中のストレート、片手打ちで叩きつけて三塁線ファール。
「えー!」
 四球目、真ん中高目、ボール。たとえボールでもこの絶好球をなぜ打たない、打てばホームランだ。五球目、真ん中高目ストレート、また片手で引っ張った。三塁線ファール? いやヒットだった。上田懸命に走ってスタンディングダブル。しっくりこない。ホームランにできるボールをホームランにしないで、どうやって得点するつもりなのだ。菅野が、
「やあ、ストレス溜まるなあ」
 メイ子が、
「ヒット打ったのに?」
 主人が、
「ホームランにできるボールだったんだよ」
 ソテツとイネは弁当に夢中だ。男三人は箸が止まっている。


         三十六 

 五番、林千代作、左投左打、百七十九センチ、八十六キロ、二十二歳。公式戦で聞いた名前だ。思い出した。王以上の逸材として期待されていたという男だ。神奈川では左のスラッガー、甲子園不出場。
「ダレたからだつきですね」
 菅野が、
「今年で引退だと新聞に出てました。ドラフト元年四十年のドラ二です」
「ドラ一は堀内、ドラ三は省三さんでしたね」
「はい、才所がドラ五、宇佐美がドラ六」
 一球目、バタバタ、外角スローカーブ。ボール。二球目、ど真ん中のストレート、バックネット直撃のファール。女たちがキャーッと声を上げる。男たちは呆れて大声で笑う。まじめに観るのはあきらめた。箸が動きはじめる。三球目、真ん中高目、いけ! あらら、サードフライ。
「……」
 振り遅れるほどは威力のない竹田のボールに、ほとんどの打者が詰まる。六番大隈正人、左投左打。百八十二センチ、八十キロ、二十一歳、サッポロビールからおととしドラ三で巨人軍に入団。菅野が、
「こいつも今年でクビだそうです」
 頭上高くバットをゆらめかせる。畏れ入った。江藤や高木のようにじっとしていられないのだ。といって中のアコーディオンでもない。初球外角ストレート、ボール。二球目外角ストレート、ストライク。三球目外角ストレート、ライトへ大ファール。左打者が外角球をライトへファール? どういうふうにバットが出てきたんだ? 四球目、真ん中低目空振り三振。なぜか上田が三塁へ走り、タッチアウト、スリーアウト。
「これ、いったい、何ですか? 少年野球よりひどい。ツーアウトから三盗なんて初めて見ましたよ」
 菅野が、
「拙攻もいいところだ。これじゃ這い上がれない。ある意味、感無量だな」
 弁当を食い終える。紙コップの氷水が配られる。
 二回裏、ドラゴンズの攻撃。四番、千原陽三郎。かわいそうに、千原さん、こんな野球をするために東京からとんぼ返りしてきたんだな。宇佐美の初球、真ん中高目カーブ、ボール。二球目外角ストレート、ストライク。三球目内角高目カーブ、ボール。睦子が、
「次は何ですか」
「外角低目、ストレート。コントロールがよければね。千原さんなら掬い上げてレフトの森へホームランを打てる」
 四球目、外角低目ストレート、空振り! 
「あ、当たらない! ヤマ張ってなかったんだ」
 ツーツー。
「すごいなあ、神無月さん、いつもそうやって読んでるんですか」
 私は菅野にうなずき、
「うん、八割の確率で当たる。予想が当たれば、空振りはない」
 主人が、
「神無月さんは、空振りそのものも、三振も、三、四回しかないんだよ。ものすごい眼力だ。次は何ですか」
「同じボール」
 五球目、外角低目ストレート、三塁スタンドへファール。
「神業だ!」
 ソテツが、
「次は?」
「真ん中高目から落ちるドロップ。選んでツースリーか、ストライクコースに落ちてきたら、三振かホームラン」
 六球目、真ん中低目ストレート。ボール。ツースリー。私は、
「アハハ、外れた。じゃ、次かな」
「なんだかうれしい!」
 メイ子が腕にしがみつく。主人が、
「神無月さんが人間に近づいた感じだね」
 菅野がコクコクうなずく。七球目、真ん中高目からドロップが落ちてきた。かろうじてファールにする。
「ウヒョー、神無月さん的中! さすが千原。一軍の控えだけある。ホームランは打てなかったけど、三振もしなかった」
「予想はここまで。ゆっくり野球を観ましょう。三回裏まで」
 八球目、外角低目ストレート、ファール。
「ファールで粘るというのは、二流の証なんだ。粘られるピッチャーも二流だ。千原さんはここでホームランを打てなければ、しばらく一軍ではベンチ組だ」
 九球目、内角低目ストレート、ファーストゴロ。主人が、
「何をか言わんやですな。気の毒になる」
 イネが、
「かわいそんだこど言わねんだ」
 菅野が、
「プロ野球選手は同情されたらオシマイだ。イネちゃん、プロってきびしいんだよ。運動場の草野球とちがうんだ」
 五番、佐々木孝次、小柄、二十四歳。もうパンフレットも見る気がしない。主人が、
「四十年に、ジュニアオールスターでMVPを獲った人ですな」
 私は、
「今年で引退だそうです」
 初球、外角低目のカーブ、ボール。二球目ど真ん中、腰の高さのストレート、見逃しストライク。
「ここなんでしょうね、分かれ目は。失投を見逃してしまう。何を考えて見逃すのか、彼ら自身もわからないんじゃないかなあ。ぼんやり見逃すんですよ。プロにきたのがまちがいだったんですね」
 三球目、内角ストレート、見逃し、ボール。アウトステップして振るべきだ。ボール半分も外れていない。ストライクと判定されても文句を言えない。四球目、外角へ大きく流れるカーブ、ボール。ワンスリー。私は、
「フォアボールで出る気になってる。甲子園の高校生と同じだ。野球の楽しさを忘れてるんですね。凡打でもいいから振らなくちゃ」
 五球目、外角手ごろなカーブ、ストライク、ツースリー。睦子が、
「ほんとだ、打たないわ」
「次、同じコースを見逃し三振だ」
 六球目、同じコースへカーブ、見逃し三振。菅野が立ち上がり、
「プロなら振らんかい!」
 と怒鳴った。佐々木はチラッとバックネットを振り返ったが、うなだれてベンチに戻った。六番、神原隆彦、小柄、三十一歳。菅野が、
「西鉄のテストを受けて即日採用された男です。愛知大学時代には十六本もホームランを打って、足は百メートル十一秒台。期待されてたんですけどね。来年から喫茶店をやるという話です」
 初球、外角高目のストレート、簡単に打ってバウンドの高いショートゴロ。
 三回表。巨人の攻撃。二軍監督の本多コーチがふと私に気づいて、帽子を振った。長谷川コーチも森下コーチもベンチから出てきて帽子を振った。一軍二軍かけ持ちで、こんなに忙しくしているのか。私は麦藁帽子を取ってお辞儀を返した。当たりがざわざわしはじめたが、私は帽子を深くかぶりなおし、知らぬふりで氷水を飲んだ。
 七番、真鍋安政、二十一歳、四十一年のドラ四。百七十七センチ、七十キロ。甲子園不出場。初球、外角高目ストレート、ファール、腰が立っている。二球目、真ん中低目ストレート、重そうなバットをヨイショと振って、センター前ヒット、パラパラとスタンドの拍手。八番、杉山茂、百七十八センチ、七十一キロ、十九歳。去年の甲子園組。準々決勝で敗退。ドラ六。一球目、三遊間へゆるい当たりのヒット。ノーアウト一、二塁。九番宇佐美、おととし一勝を挙げたきり一軍出場なし。ストレートは堀内より速く、ドロップは堀内より切れると言われているが、きょう見たところではその証拠はなし。初球、外角速球、ファール、二球目、外角ストレート、ボール、三球目、ゆるい当りのピッチャーゴロ。三塁から二塁へと渡ってゲッツー。なんじゃ、三振でもするところだろう。ピッチャーがランナーで残った。最悪。一番に戻って、才所。一球目、外角へ打ちごろのハイボール、ストライク。とにかく彼らは失投を見逃して、難ボールを打つ。二球目、内角胸もと、空振り。主人が、
「こりゃ、あかん。いったい、どういう連中だ?」
 三球目、外角低目いっぱい。なぜか〈腰を引いて〉引っ張ってショートゴロ。
「三回の裏、中日の応援をきちんとして帰りましょう」
 女たちが声を合わせた。
「ドラゴンズがんばれー!」
 七番、竹内洋、二十三歳、百七十八センチ、七十五キロ、甲子園出場組。初球、外角高目カーブ、つんのめって見逃し、ボール、二球目、外角ストレート、絶好球、バックネット越えのファール。深い倦怠がきた。左肩袖の金鯱のマークが泣いている。三球目、外角高目、絶好球、引っ張ってレフトフライ! 外角を引っ張るのは場合によっては許される打法だが、踏みこんでじゅうぶん体重を残して振らなければ強い打球は飛ばない。八番、新谷憲三、二十六歳、百七十七センチ、七十六キロ。左バッターに最後の期待をする。主人が、
「この新谷は、立教時代は三番を打ってましてね、四番がいまの巨人の槌田。日本石油では四番の控えをしてて、一応主力と目されてたんだけど、思い切ってやめて阪神のテストを受けて落ちた。もう野球をやめようと思ってたところを中日に拾われたんです。二年目ですけど、今年かぎりで引退でしょう」
 菅野が、
「そんな選手がプロ球界の九割ですよ」
 新谷は縮こまって構える。初球、外角高目、ボール。二球目、ど真ん中、腰の高さの絶好球。バックネットオーバーのファール。
「?……」
 周りの観客を見回す。食べたり、飲んだり、遊山気分に浸っている。〈プロ野球〉を観ているということに安心しているのだ。しかし、河原の少年野球のほうが、もっとヒットも長打も出る。ローレベルだから? 逆だ。ここにいる彼らはハイレベルでシノギを削り合っているようには見えない。縮こまりながら、夢を見て、懸命にやっている。三球目、外角ストレート、絶好球。強振。レフトの浅いファールフライ。バッティングピッチャーのようなボールに反応できない。彼らの懸命さにやさしくうなずく気持ちになれない。プロとして必要な才能がまったくないからだ。
 九番、竹田、一球目、真ん中ストレート、振り遅れてレフト前ヒット。期待していなかったピッチャーにヒットが出た。女たちが拍手する。二軍でも森下コーチが、元気いっぱいに一塁コーチャーズボックスに出て手を拍っている。主人の話では、たとえ水原監督の要請でも、一軍参加は職掌の逸脱のようで、一軍ベンチに入るときは長谷川コーチとともにスコアラーという名目でベンチ登録しているらしい。
 一番、村上、初球外角低目スライダー、ボール、二球目、外角ストレート、バックネットへファール。両チームともとんでもなくファールが多い。村上はそれからもカーブ、スライダー、カーブと三球つづけてファール。六球目、外角スライダー、空振り三振。みんなで立ち上がった。帽子を振るコーチ連にもう一度頭を下げる。駐車場に向かいながら私は、
「目も当てられませんでしたね。ピッチングもバッティングも。……二軍戦はもう観にきません」
 男たちがうなずく。ソテツが、
「私は楽しかったです。いろいろ解説が聞けて。プレイにスピード感もありました」
 イネが、
「クビになりそんだ人たちが、あったらに一所懸命やって。胸痛ぐなったじゃ」
 メイ子が、
「守備がじょうず。やっぱり素人じゃない感じがしました」
「そう? みんなやさしいね。がんばるだけでは報われないのがプロの世界なんだ」
 メイ子はうなずき、
「才能というものは私にはわかりませんが、中日球場で見る選手のかたがたより、きょうの人たちは少し甘えているように感じました。一所懸命やっていることはよくわかりますけど、走り方とか、ちょっとしたバットの振り方とか」
 菅野が、
「さすが年の功だ。私の目にも、彼ら二軍選手が一軍レギュラー選手のような贅肉のない生き方をしているようには見えなかったです」
 主人が女たちに、
「何人か素人とはちがう才能を感じる選手はおったんだよ。やっぱりプロやなあと思った。しかし、鍛錬をサボっとる才能は、あまり人を惹きつけんのよ。あふれるほどの才能の持ち主は、しゃかりきに鍛錬する根性があるし、そのせいで、精神のゆとりみたいなものも出てくる。プレイやふだんの仕草に風格みたいなものが出てくるんやな。人を惹きつけるのはそれや。才能ある人間が、なりふりかまわず努力してかもし出す風格を、適当な才能しかない甘えた人間が持てるわけがあれせん。あんたたちはええものを見たよ」
 菅野は、
「まだ二時前です。名鉄に直ちゃんのプレゼントを買いにいきましょう」



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