ブルー・スノウ

 さまざまな雪の風景が主人公の足取りと共に描き出されます。雪を知らない都会の若い現代っ子には、その景色は新鮮に感じられるかもしれません。子供の時、ふるさとで雪に触れた大人は懐かしく思うかもしれません。雪が降り出す寸前の空、澄んだ空気。雪が音を吸い取るせいで、まわりがしーんと静まりかえるような感覚。雪解けのなかに現れる凍った土。雪のパノラマが様々に展開します。
 雪国、青森県を舞台に15歳の少年は、温かな友人たちに囲まれながらも、心のうちで悩み、苦しみながら、文学に目覚めてゆく。少年の初々しい魂は、苦しみを浄化できるのか・・・。
 年上の看護婦との恋愛沙汰が原因で、母の田舎に単身強制転校させられた主人公・大久剣は、こころの中に棲み続ける恋人の面影を秘めて、静かに諦めていた。その諦めは主人公の「悲しみ」の核になり、悲しみを背負った剣の目に映る北の風景は、美しく、まるで現実の中にいないような錯覚を覚えさせるほどだった。しかし、そんな主人公の心とは対照的に彼の周りで起きる出来事や、まわりの友人たちは、実に華々しく、やさしい。転校先で友達になった、無口な少年・山田は人には言えない重大な秘密を抱えていた。秘密を抱えた二人の心は共鳴しあい、親交を深めていくが・・・。二人に突然の別れが訪れる。


ブルー・スノウ



ブルー・スノウの舞台を訪ねる



帯文

 生きようとする人間だけに、
 宝ものがやってくるんだ。
 宝ものがやってくるのは、
 命が持ってる価値を伸ばして、
 光でいっぺェにするためなんだじゃ (本文 八章より)



「文学界」'03年7月号 広告                    東奥日報'03年7月7日書評


                     東奥日報掲載記事




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