kawatabungaku.com
川田文学.com 

《ジョー・スタッフォード(1956) 霧のロンドン・ブリッジ》

 

 あまりにも思い出深い曲。1959年、小学四年。あの、ヤッヤッヤーヤの通人クマさんに路を歩きながら教えてもらった。

「クマさん、この曲、何て曲? すごくいい」

 熱田区千年の喫茶店に連れていってもらう途中だった。電信柱のスピーカーから聞こえてきた。

「タクはほんとにたしかな耳してるな。霧のロンドン・ブリッジ。ジョー・スタッフォードっていうアメリカ人。昭和27年に『ユー・ビロング・トゥ・ミー』がアメリカ、イギリス両方のヒットチャートで1位になった。温かいパンチのある声でな、何を歌っても、レコード売り上げは世界レベルだ」

 彼は翌日、ジョー・スタッフォードのLPを買ってきてくれた。ほとんどがモヤモヤした歌いぶりで、これ一曲しか気に入らなかった。その溝だけが磨り減ったので、自分でEP盤を買ってきた。それも磨り減った。レコードが新品だったころに、『私の好きな曲』というカセットに残した。