全き詩集

 まえがきをお読みになった皆様はご存知かと思いますが、14歳から23歳までの数百の中から、数年かけて選んだ44作品が収録されています。中学生のころから詩人を志していた川田氏ですが、当時早大生だった23歳の筆者が自殺未遂をしたことを機に、詩というものが書けなくなってしまったそうです。それでも26歳で「詩の世界社」から出版を果たし、H氏賞候補まであがりますが、詩の世界社の倒産が重なりとうとう陽の目を見ることなく絶版になり、’95年に近代文芸社から再出版をされました。
 今は、小説に転向なさった川田氏ですが、40数年ぶりに詩が書けたそうです。14歳の作品「野辺地」の反歌です。14歳の初々しい精神そのままで、正直、鳥肌が立ちました。
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  野辺地反歌

わたしは野辺地の歌を知っている
風に漂白された帆立貝や 網をつくろう茶色の顔
雨の刈田に浮かぶ霧烏帽子

野辺地はわたしの歌を?
あの日の少年の肌の色を 雪に映し
その名を遠い希望に掲げるか
それとも 夏の淡い陽は
わたしの似姿に影を落とし
スグリ垣に吊るされたミー助は いまも
わたしを捜しているか

降り立つ駅舎の向こうに
わたしの歌はあふれ
鉄路のこなた
墓に歌碑を刻む悲しみが 時を平(な)らす



帯文

川田拓矢の詩は滑らない。
世界の中心に向かって最短距離を疾走する彼の言葉達は無謀なヘッドスライディングを必要としないのである。
              ―竹内銃一郎(劇作家)―

(近代文藝社 1500円) 04.5.30再版



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