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 《素晴しき哉!人生(1946)》
監督 フランク・キャプラ  出演 ジェームズ・スチュアート



 心ある人間ならかならず落涙するファンタジー映画。アメリカでは感動する映画1にあげられているが、感動を嫌う日本人のあいだでは不人気の極みである。アメリカでは映画学科の学生に定例的にこの映画を見せて名画の指針とするが、日本では歯牙にもかけず、得体の知れない前衛映画を見せる。世評とちがってどちらがプラグマティズムの国か、この一事ですっかりわかる。いずれにせよ、人間の歴史のつづくかぎり永遠に残る不朽の名作。

 本能的に親切な男の子がいる。長じても親切なままである。彼一人の在不在が、周囲の人びとの人生を変える。そういう映画だ。才能や業績が人の世を変えるのはしごくあたりまえのことだが、やさしさが個人の人生を変えるのは並一とおりのことではない。前者は前提に名望欲があり、後者は根底に無私があるからだ。
 無私の人間しか、個人の人生をすばらしいものにはしない。