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ワム(1984) ラストクリスマス

  

トナカイの鈴のリズムが全編を貫くみごとなクリスマスソング。実際の鈴が鳴っているわけではない。イギリスのシンガーソングライター、ジョージ・マイケルの作詞作曲。学生時代の音楽仲間アンドリュー・リッジリーとデュオ「ワム」を結成し、少年のようなやさしい声で数々のヒットを飛ばした。そのヒット曲はすべて気に入らないが、この曲だけは天才の賜物。

 三十代半ば、予備校教師になりたてのころにラジオで聴いて気に入り、すぐ手に入れた。給料のすべてをオーディオの月賦と、競馬につぎこんでいたころだ。JBLのスピーカーからこの曲はとんでもなく美しい音で鳴り響いた。現代洋楽の蒐集と、アンプとスピーカーの接続調整の追究に拍車をかけるきっかけを与える曲になった。

 歌詞の内容は、曲想とちがって、サマセット・モームの『人間の絆』ふう。悪女のミルドレッドと救済天使のサリーという永遠の二重構造をイメージした。

 マイケルは昨年の暮れ、まさにクリスマスの日に死んだ。53歳。死因は発表されていない。スーツを着て歌うイギリスロック歌手の典型として、記憶が新たになった。