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祝 週言一周年おめでとう。

5月31日
 朝日が波から躍り出るような元気を、いつも持っていなければならない。そして、もう日の入りだと身体が教えるまで、手あたりしだい、何であれ、その日にするだけのことを一心不乱にしなければならない。

5月21日

人の身にほんとうのことほど恥ずかしいものはないと、人の口に、あるいはものの本に言う。たとえば、生まれ、育ち、経歴、学歴、病気、身体の瑕疵、頭の回転等―。しかし、私は愚かな若年の一時期を除いて、それらに価値を置いたことがない。私にとって大切なのは、暗闇の価値観から抜け出て生命躍如たるか、その一事である。


5月8日

乗るかそるかをやらなければ、一生何の変哲もない。その恐怖はよくわかる。しかし、変哲があるというのは、たぶん現世における立身や成功の意味だろう。どんな手段を使っても時流に乗るために、わが身に上昇の変化を起こさせようとして生きるのには、かなり怜悧な人格を必要とする。たいていの人はそんなことを思いもしない。そしてそれで十分に能力を発揮し、幸福な生活を送ることができる。

ある好みから身につけた技術のほかは、何の技量もないほとんど無学文盲の人物であるばかりか、すこぶる片意地で、頑固で、世の成り行きを見て身の計りごとを少しも立てない。それだけならまだしも、それが昂じて世の成り行きを呪い、努めて逆行しようとする人間の、何と美しいことだろう。なんと幸福なことだろう。



5月1日

ハタから強く押しつけられたら、否も応もない。私はそういう性格だ。したがってわがままを押さえて忙しく生きざるを得ない。これは私に限らないことにちがいない。つまり、人は他人のために生きている。それは一人の例外もない。だとすると、他人のために生きていない人間は、人非人ということになる。これは〈個性論〉に反駁する、明るく、生産性のある結論だ。





ご注意
06年5月
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牛巻坂
著者:川田拓矢
出版社:近代文芸社
本体価格:1,800円